▼書評 『ハーバードの個性学入門-平均思考は捨てなさい』
ハーバードの個性学入門-平均思考は捨てなさい
著者 トッド・ローズ
訳者 小坂 恵理
出版社 早川書房
発行 2019 03/25
本書は、まさに時代の要請に適した良書です。教育関係者、企業のマネージャー方々などには、とりわけおススメの書籍です。そもそも個性学という学問は、本書を読了するまで知る由もありませんでしたが、学際的で斬新な学問分野であります。世にはびこる「平均」という呪縛。実際、「工業化時代」の形成にと進展には貢献したかも知れません、しかし、もはや工業化時代は幕を閉じ、今日ボク達は全く異なった問題に直面して様が本書で垣間見えます。
学校は平均的な生徒との比較で個々の生徒を評価し、会社も平均像に比べて応募者や社員を評価します。しかし、平均的な体や平均的な脳が存在しないとしたら、重大な疑問について考えなければなりません。それは、そもそも社会はどうして、平均的な人間というアイデアをむやみに信じるようになったのか??そもそも平均思考とは、
例えば、優等生が能力を評価されるのは、全員が受けた共通テストで優秀な成績を上げたからです。高得点の就職希望者が望ましいのは、同じテストを受けた学生よりも資質が上回っているなどなど。つまるところ、「個性」より「制度」が重んじられてきたわけです。
実は、本書の著者のローズ氏も、世に言う「平均」から乖離した学生生活でした。高校を中退し、その後職を転々、その数10種類の職を転々したそうです。大学の夜学コースで学び、現在はハーバード教育大学院で個性学の研究所長を務めています。そんな著者による、より良い社会とはこうだ!!
と。マネジャー職の方であれば、フレデリック・テイラーの書籍『科学的管理法-マネジメントの原点』に目を通された方も多いことでしょう。昭和の高度成長期、または日本型終身雇用時代にはテイラー主義はマッチしていたのでしょうが、しかし、時代は創造力に副業時代とも言われておりますよね。完全にボクは著者の提言する「個性」の時代に激しく同意します。テイラーのような平均主義を王座から引きずり下ろすしたのが、2004年名門アムステルダム大学の心理学教授部門の責任者のペーター・モレナールです。氏は
ことを宣言しました。驚くほど最近の話ですよね。モレナールは最も重要な人間の資質(才能、知性、パーソナリティ、性質など)は、ひとつの点数では評価できないものと考え、非線形の変化を伴う動的な数値に基づいた力学的数学に目を向けるべきだと主張しました。モレナールの提言から月日が経ち、本書によれば、グーグル、デロイトトーマツ、マイクロソフトの各社は2015年の時点で、ランク付けに基づいた採用・評価制度を修正または放棄していたそうです。
つまるところ、人間と世界との関わりなど、長い時間をかけた変化を伴う多元的システムにおいて例外なく、A地点からBの地点に到達するまでに複数の経路が常に存在します。たとえば、幼児の「ハイハイ」、ハイハイに至る正常な道など存在しなく、子どもがたどる道はひとつどころか25種類もあり、さらにはどれもユニークだといいます。
そして、人間は個性にバラツキがあり、しかもそれはコンテクストに左右されので、進歩の速度も結果にいたるまでの順序も異なるのが当然といえるといいます。
さらには、人間の成長には「迂回路の原理」が存在するといいます。たとえば、子どもが単語を覚えるにしても1年、2年、3年生が読解力を分析したところ、60%の子どもが「標準的な」経路で、しかし手に入れるスキルは同じでもそこに至る経路が異なるケースが全体の30%にのぼり、それでも読解力にまったく問題がなかったというのです。
ボク達の人生
と。本書の第8章では「高等教育に平均はいらない」と題し、教育改革を訴えております。教育制度全体での支援体制が欠かせないが、
といいます。本書では、平均思考についての危うい研究事例も豊富です。読み進める上でも、ストーリーも完璧です。書籍『セルフドリブンチャイルド-脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』と合わせてお読みいただければ、相乗効果もきっと享受できることでしょう。
また、働き方改革が叫ばれる昨今、自分を見つめ直すにも本書は、本当におススメです。
【関連書籍】
セルフドリブン・チャイルド-脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方
著者 ウィリアム・スティクスラッド+ネッド・ジョンソン
訳者 依田 卓巳
出版社 NTT出版
発行 2019 03/06

著者 トッド・ローズ
訳者 小坂 恵理
出版社 早川書房
発行 2019 03/25
本書は、まさに時代の要請に適した良書です。教育関係者、企業のマネージャー方々などには、とりわけおススメの書籍です。そもそも個性学という学問は、本書を読了するまで知る由もありませんでしたが、学際的で斬新な学問分野であります。世にはびこる「平均」という呪縛。実際、「工業化時代」の形成にと進展には貢献したかも知れません、しかし、もはや工業化時代は幕を閉じ、今日ボク達は全く異なった問題に直面して様が本書で垣間見えます。
学校は平均的な生徒との比較で個々の生徒を評価し、会社も平均像に比べて応募者や社員を評価します。しかし、平均的な体や平均的な脳が存在しないとしたら、重大な疑問について考えなければなりません。それは、そもそも社会はどうして、平均的な人間というアイデアをむやみに信じるようになったのか??そもそも平均思考とは、
誰もがほかのみんなと同じことで、みんなよりも秀でることだけをめざす
例えば、優等生が能力を評価されるのは、全員が受けた共通テストで優秀な成績を上げたからです。高得点の就職希望者が望ましいのは、同じテストを受けた学生よりも資質が上回っているなどなど。つまるところ、「個性」より「制度」が重んじられてきたわけです。
実は、本書の著者のローズ氏も、世に言う「平均」から乖離した学生生活でした。高校を中退し、その後職を転々、その数10種類の職を転々したそうです。大学の夜学コースで学び、現在はハーバード教育大学院で個性学の研究所長を務めています。そんな著者による、より良い社会とはこうだ!!
ボク達は個性を認めらえたいと願い、本当に自分らしくなれる社会で暮らしたいと欲する。人工的な基準に自分を無理やり当てはめる必要がなく、生来の資質を尊重しながら学習して能力を高め、機会を追及できるようになればどんなに素晴らしいだろう。個人は平均との比較のみで評価されるべきだという確信に基づいている社会のなかで、個性を理解して生かすことのできる状況をどのように創造できるだろう
と。マネジャー職の方であれば、フレデリック・テイラーの書籍『科学的管理法-マネジメントの原点』に目を通された方も多いことでしょう。昭和の高度成長期、または日本型終身雇用時代にはテイラー主義はマッチしていたのでしょうが、しかし、時代は創造力に副業時代とも言われておりますよね。完全にボクは著者の提言する「個性」の時代に激しく同意します。テイラーのような平均主義を王座から引きずり下ろすしたのが、2004年名門アムステルダム大学の心理学教授部門の責任者のペーター・モレナールです。氏は
平均主義は救いがたいほど間違っている
ことを宣言しました。驚くほど最近の話ですよね。モレナールは最も重要な人間の資質(才能、知性、パーソナリティ、性質など)は、ひとつの点数では評価できないものと考え、非線形の変化を伴う動的な数値に基づいた力学的数学に目を向けるべきだと主張しました。モレナールの提言から月日が経ち、本書によれば、グーグル、デロイトトーマツ、マイクロソフトの各社は2015年の時点で、ランク付けに基づいた採用・評価制度を修正または放棄していたそうです。
つまるところ、人間と世界との関わりなど、長い時間をかけた変化を伴う多元的システムにおいて例外なく、A地点からBの地点に到達するまでに複数の経路が常に存在します。たとえば、幼児の「ハイハイ」、ハイハイに至る正常な道など存在しなく、子どもがたどる道はひとつどころか25種類もあり、さらにはどれもユニークだといいます。
そして、人間は個性にバラツキがあり、しかもそれはコンテクストに左右されので、進歩の速度も結果にいたるまでの順序も異なるのが当然といえるといいます。
さらには、人間の成長には「迂回路の原理」が存在するといいます。たとえば、子どもが単語を覚えるにしても1年、2年、3年生が読解力を分析したところ、60%の子どもが「標準的な」経路で、しかし手に入れるスキルは同じでもそこに至る経路が異なるケースが全体の30%にのぼり、それでも読解力にまったく問題がなかったというのです。
ボク達の人生
はしごなんて存在しない。誰でも、発達は網の目構造のなかで進行する。新たな段階に一歩踏み出すたびに新しい可能性があちこちで提供されるが、どこに進むかは個性に大きく影響される
と。本書の第8章では「高等教育に平均はいらない」と題し、教育改革を訴えております。教育制度全体での支援体制が欠かせないが、
自分は何が好きで、どんな事柄に秀でているのか、学生が評価し直せる環境が提供されれば、自分の新たな可能性と求人市場の変化を擦り合わせ、キャリアプランを調整するのが当たり前になる
といいます。本書では、平均思考についての危うい研究事例も豊富です。読み進める上でも、ストーリーも完璧です。書籍『セルフドリブンチャイルド-脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』と合わせてお読みいただければ、相乗効果もきっと享受できることでしょう。
また、働き方改革が叫ばれる昨今、自分を見つめ直すにも本書は、本当におススメです。
【関連書籍】

著者 ウィリアム・スティクスラッド+ネッド・ジョンソン
訳者 依田 卓巳
出版社 NTT出版
発行 2019 03/06
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。