▼書評 『第6の大絶滅は起こるのか-生物大絶滅の科学と人類の未来』

第6の大絶滅第6の大絶滅は起こるのか-生物大絶滅の科学と人類の未来

著者 ピーター・ブラネン
訳者 西田 美緒子
出版社 築地書館
発行 2019 02/28







《大量絶滅は地球の歴史上で数えるほどしか起きていないのだから、史上最悪の出来事。あらゆる条件が揃う、あらゆる条件が整う、そうすると大量絶滅につながる》
《現在、地球上で暮らす陸生生物のうち、野生生物は何パーセント??》

本書は、惑星科学を専門とするジャーナリストによる壮大なテーマに迫った意欲作です。フォーブス、NYタイムズ、ボストン・グローブ、ガーディアン紙など各紙絶賛の書籍でもあり、この春に一押し本です。そもそも地球の誕生以来、全域にわたる突然の大量死によって動物の命がほとんど失われてしまったことが、これまでに5回ありました。いわゆる「五大絶滅」で、一般的な定義によれば、大量絶滅とは地球上の半数を超える種が、およそ100万年のあいだに絶滅した出来事を示します。

著者は、地質学、古生物学、宇宙学、地球物理学者などと直接会い、実に興味深い洞察力と緊迫感で読み手を惹きつけていきます。そこで、著者は

人間が地質学的規模でこの惑星をひどく混乱させているという考えは、人間中心の思い上がりにすぎないのかという感情が、とくに科学に詳しくない人々のあいだで存在するといいます。だが、そのような感情が生まれるのは、生命の歴史を見誤っているからだといます。

人間にはきっと、カンブリア爆発の濾過摂食動物と同じくらい重要性はあるだろう

というのです。とはいえ、過去3億年間で最も重要な3回の大量絶滅は、いずれも大陸全域を覆うほど大規模な溶岩の流出によって起きています。つまり、ボク達の想像を絶するほどの大噴火が原因でした。しかし、もう一つの大絶滅の場合プレートテクトニクス、そしておそらく生態そのものの、さまざま要素が重なりあって二酸化炭素を吸い上げ、海を汚染したという説を唱える地質学者もいるくらいです。それでは、過去の五大絶滅をおさらいしておきましょう!!

①オルドビス紀末【4億4500万年前】 現在のアパラチア山脈を生み出す大規模な造山活動が始まったのがこのオルドビス紀末になります。えっ、アパラチア山脈が大絶滅の要因かも?!
②デボン紀後期の大絶滅【3億7400万年前、3億5900万年前】
③ペルム紀末の大絶滅【2億5200万前】
④三畳紀末の大絶滅【2億100万年前】
⑤白亜紀末【6600万年前】

です。上述の五大絶滅の中でも、ボクが注目したのが「デボン紀末の大絶滅」です。何しろその長さだ。2000万年~2500万年にわたって起きた出来事だから想像を絶する。また、小職のような農業を生業とするものにとっては、「植物が縦に伸びる段階に達した」のがデボン紀中期だから、注目に値しよう。全体を支える繊管束組織を発達させて、木々は日光を受けて互いを押しのけながら、競うように林冠の一番上を目指したのもこの頃だ。その陸上に進出した樹木が引き起こした危機は「富栄養化」が原因と思われ、現在では藻類ブルーム(藻類大発生)と重なっているから尚のこと興味が引かれた。

さらには、デボン紀の最後に起きた大量絶滅は、大型でカリスマ的な脊椎動物の大規模な死滅、他の大量絶滅は無脊椎動物やプランクトンに対する影響によってのものなので、やはりデボン紀末は特筆に値するとボクは思います。しかも、脊椎動物の96%を消し去っており、さもありなんです。つまりは、現状デボン紀後期の危機には、とても多くの要因があるという。たとえば、樹木の広がり、氷河作用、火山活動、富栄養化と海の酸素欠乏、侵入種、そのほかの要素によって、地球システムの循環が急角度に変化したのです。まさに、あらゆる条件が揃う!!あらゆる条件が整うです。五大絶滅の殺しのメカニズムは、是非本書でご確認下さいませ。

また、「大量絶滅」とは、どのようなものか??をペルム紀末で考察することができよう。それが「シベリアトラップ」=「洪水玄武岩」であります。洪水玄武岩がロシアの500万平方キロメートル以上の地域を覆いシベリアを混乱状態に陥れ、さらには米国本土全体を800メートルの厚さで埋めつくす量の溶岩が噴出したのだ。このシベリアトラップは、古生代のあいだ何億年もの歳月をけて蓄積された膨大な量の石炭、石油、天然ガスを経済的動機がなかったにせよ、燃やしました。

現在、人類は一年に40ギガトンという信じられない量の二酸化炭素を排出しており、おそらくこの数字は地球史の過去3億年で最速のペース。いやいやペルム紀末は、人類が燃やせる量の2倍から、計り知れない4万8000ギガトンまでの範囲と推測されています。その結果気温は最大16℃も上昇したといいます。熱帯地域では海水温が現在と同じくらいの25℃から、40℃へと上昇した可能性もあるそうです。

そして、ペルム紀末から学べる最大の点が、海洋の酸性化です。ペルム紀末の海で最も重要な死の要因が酸性化であったのです。現在海水の酸性化によって、2050年までには、南氷洋全体で翼足類の棲めない場所になり、生態系は破滅的な状態になるといわれております。また、ある画期的な研究によれば、一年に2ppmづつの割合で大気中の二酸化炭素濃度を高めていて、世界のサンゴ礁は今世紀半ばまでに「急速に崩壊してがれきの山」となるとも。

忘れてならないのは、

ボク達がサンゴ礁を消滅させのにはたった数十年しかかからないかもしれないが、三畳紀末の大絶滅が何らかの指針となるとすれば、これらの生態系がもとに戻るには、数十年や数百年、数千年でもなく、数百年という年月を必要とする

その他にも、白亜紀末の大絶滅の論争の的が「チクシュルーブ」への小惑星衝突ですが、マグニチュード11に匹敵し、それが世界のどこにある火山でも噴火を誘発した可能性など新たな見解も読み応えたっぷりです。

現在、ボク達が生きている世界。平均気温が1℃上昇しただけで、50年に一度の大雨、50年に一度の台風などをメディアで取り上げられますが、これから起こるであろう「パンゲア」の再形成など地球の未来へと本書では綴られております。

ボクは本書を読了し、環境問題を考えずにはいられませんでした。現在、地球上で暮らす陸生生物のうち、野生生物は僅か3%しかいません。人間、人間が飼っている家畜、そして、ペットが生物量の残る97%を占めているそうです。

最後に本書において、英国の地質学者アンソニー・ハラム氏の言葉がすごく印象に残りました。

「自然と調和した高潔な未開の暮らしという概念は、本来の神話の領域に送り戻すべき。人間は自然と調和して暮らしたためしがない」

と。ページを読み進めれば、ノンストップでご一読いただけるサイエンス・ノンフィクション本です。皆さんも是非、手に取って下さいませ。

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