▼書評 外国人が見た日本-「誤解」と「再発見」の観光150年史

外国人が見たにオン外国人が見た日本-「誤解」と「再発見」の観光150年史

著者 内田 宗治
出版社 中央公論新社
発行 2018 10/25







《昭和50年エリザベス女王が来日した際、拝観を希望し絶賛した場所とは??》
「爆買い」、「インバウンド消費」なる言葉が流行になるくらい、訪日外国人は皆様もご存じのように右肩上がりです。2017年の訪日外国人は累計2869万人だったそうです。

観光立国と謳い、いまのわが国の現在地は第一位フランス、第二位スペイン、第三位アメリカ・・・12位日本という位置付けになっております。本書を読み始めると同時に、日本のある場所を思い浮かべました。ボクは一度行ったことがある場所なのですが、そこは「瀬戸内海」です。書籍「本当に住んで幸せな街」の著者である万丈氏と木下氏の対談で、あるリバプールの金持ちのおじいちゃんが「瀬戸内海はエーゲ海のどこそこよりも良かった」と述べたのです。さらには、瀬戸内海は客単価50万円オーバーの宿がない..とこういう視点の大切さが重要だと。本書もこのおじさいちゃんに通じる点が多いです。

本書では都内で外国人旅行者に最も有名な場所、渋谷のスクランブル交差点だったと紹介しています。ある外国人いわく「センター街を行くには、この惑星で最もクレイジーな交差点を通ることを忘れてはならない」とコメントを寄せているそうです。まさに、日本人には観光地と思いもよらなかった場所で、こうした外国人によって「発見」された魅力も本書では紹介されています。

そこで、
●本当に今後も外国人旅行者は増加し続けるのか
●そもそもグローバルに見て、日本はそんなに魅力ある旅先なのか

上述の2点にフォーカスし150年の観光史を俯瞰し結ぶのです。イギリス外国人アーネスト・サトウらによる日本を対象としたガイドブックが発行されたのが、明治17年です。それをもとに、明治と平成の外国人向け旅行案内書の比較などを行います。当時から東京、京都、日光、箱根、富士山、奈良などは、130年以上に人気を保っているのがわかります。

外国人からの視点で興味深かったのが、「登山」です。なぜなら登山は、西欧文化の中で最も遅れて日本に伝わってきたものの一つだからです。それゆえ、「上高地」の魅力を発見したのは、日本近代登山の父と呼ばれるイギリス人ウォルター・ウェストンです。

また、現在の観光庁なるものがなった時代、外国人観光客を積極的に受け入れ歓待する団体を設立する推進役となった人物が、大実業家・渋沢栄一、三井物産の創設に関わった益田孝、外国人旅行者の接待団体の誕生からJTB(日本交通公社)へなど旅行、観光、リゾート関連の歴史など軽やかなタッチで描かれているので、非常に読みやすい構成です。つまるところ、

観光というものが、経済的側面だけでなく多面性をもっている

本書でわかりやす例が、広島の「広島平和記念資料館」。この地は2018年外国人に人気の日本の観光スポット第2位です。欧米・オセアニアの外国人観光客がアジアからよりも1.6倍 も多い。現在日本への外国人旅行者では、アジアから約84%を占めている実態からすると、かなり特異となるそうだ。見学する旅行者の国が背負う歴史、国ごとに人気度、訪問率が最も顕著な場所です。

さらには、著者はクールジャパンに象徴される

自分たち日本人の魅力を外国人がどう思うかなど、正確に想像するのは難しい。不可能かもしれない。外国人の判断に任せたほうがいい
と。日本人が日本人の魅力を語るのは相当注意が必要とのことです。

日本人と外国人とでは日本の魅力を考える内容について、ギャップがあり続けていました。それは外国人の間でも同様です。

本書の最終章では、中国人旅行者の激増は諸刃の剣などの今後の観光業のリスクなでも記述されております。歴史を振り返れば、大小の世界恐慌、国内の震災、テロ、原爆事故etc..訪日客減に関わる様々な大波小波が押し寄せてきています。東京オリンピック2020を控え、今後の観光業を捉える書、さらには、地方創生の鍵となる大局的視点も掘り起こされると思います。

是非本書をご一読下さいませ。

《A エリザベス女王は龍安寺石庭を絶賛されたそうです。敷き詰められた白砂の中に大小15の石が置かれた龍安寺石庭に》