▼書評 『死体は嘘をつかない-全米トップ検死医が語る死と真実』

死体死体は嘘をつかない-全米トップ検死医が語る死と真実

著者 ヴィンセント・ディ・マイオ/ロン・フランセル
訳者 満園 真木
出版社 東京創元社
発行 2018 01/31






《本年最初のノンストップ・ノンフィクション》
《裁きとは満足や罰と同義ではない》
わが国でもTⅤドラマなどで科学捜査関連の番組も多数放映されております。厚労省の白鳥圭輔とグッチーとの名コンビ、ドラマ「チーム・バチスタ」そして、ドラマ『相棒』は根強い人気がありますね。小職は最近視聴しておりませんが、そのドラマの人気の理由のひとつが「論理的思考」ではないかと考えております。

著者は検死医であり、法医学者です。銃創の権威として全米に広く知られているそうです。過去に2万5千件の死を調べ、9000件の解剖経験があります。父の影響もあり「検死医」の道に。「死」は生活の一部とも記述されております。現在、アメリカ人の死因の42%が自然死で、38%事故死です。9%が自殺で、6%が他殺、そして残り5%が死因不明だそうです。本書の各章ごとに、事件の概要、死因にまつわる謎、そしてドクター・ディ・マイオの冷静沈着な見解、さらにはそれを踏まえての裁判結果。この構成はもうひとりの著者である、フランセル氏のセンス。各章(各事件)が縦軸とすれば著者の〈検死医〉としての強い思いが横軸に記述されており、ノンストップでお楽しみいただける書籍です。

例えば、検死医としての38年間の経験において、口に撃たれた人を100人見てきたが、3人をのぞいて、すべて———99%———が自殺だったと。実際アメリカ女性で一番多い自殺方法は銃によるもので、約15%が口を撃って死んでいたそうです。さらには、首つりでは必ず首の骨が折れるというのもハリウッドやTⅤドラマの神話である..etc

では、どんな事件が縦軸に散りばめられているのでしょうか??
①バラクオバマ前大統領が「トレイヴォン・マーチィンは35年前の私だった可能性がある」発言で大統領レベルとなった、全米大注目の事件!!黒人少年が射殺された事件は、白人の正当防衛だったか?? この事件はご記憶の方も多いでしょう!!
②23年間に、マーサ・ウッズ(女性)が面倒を見ていた子どものうち少なくとも7人が死に、少なくとも5人が危険な呼吸困難の発作を起こした事件。
③第5章では、あのリー・ハーヴェイ・オズワルドの棺を掘り起こし、解剖します。この解剖は、空っぽの頭蓋骨にこそ、謎を解く鍵が眠っていました。
④テキサス州の看護師、ジェニー・ジョーンズは最大で46人の乳幼児を殺したとされる。さて、この事件の真相は??
⑤ビートルズも手掛けた大物プロジューサーは、女優を殺したのか??
⑥8歳の男児3人は、『スタンドバイミー』さらがらに、アーカンソー州・ウェストメンフィスの「ロビンフッドの丘」に出掛け殺された、容疑者の十代の3人は悪魔の崇拝者だったのか??
⑦128年目の真実!!天才画家フィンセント・ファン・ゴッホは本当に自殺だったのか??ドクター・ディ・マイオの見解は?? など、など。。

前述のように38年間で2万5千件の死を調べ上げてきた著者。「死から学べ」とばかりにどの章の事件も実名記述でもありますので、非常にドラマチックです。つまるところドクター・ディ・マイオにとって検死医とは??死とは?? 法医学医の一番のツールは、今も自分の目と頭脳!!

真実を明らかにすることが法医学者の唯一の使命
ただ、公平で偏りのない真実を告げること

これは、遺族の味方をするのでも敵になるものでもなく、真実を告げること。さらには大切なことは、憶測を控え、感情とは距離を置いて事実に注目するであると。著者は人を解剖するのではなく、死体を解剖する。人は生きて脈を打っていて、それぞれ違い、死体はこの世を去った後の残りでしかないとも。

そして、著者にとってその死生観とは??

死とは、人に魂のある証だ

人間はトウモロコシのようなもの。外側に皮があり、その中に実―――命の種―――がある。死体を目にするとき、それは皮でしかない。魂はもうそこにはないのだから。

本書をご一読いただければおわかりになりますが、どんなにドクター・ディ・マイオが真実を告げても裁判では納得できない〝裁き〝(ケース)も非常に多いと実感すると思います。本書では、事件の真相もさることながら、アメリカにおける司法制度の問題、銃社会、死因不明社会と社会問題だけにフォーカスしても価値のある書籍だと思います。

現在、認定を受けた現役の法病理医は全米で500人未満しかいないそうです。全力でやっても、ひとりが一年で解剖できるのは250体ほどです。よって倍の法病理医が必要なのです。

人を助けたくて医師になった著者。現在は法医学のコンサルタントとしてご活躍中です。

本書ではTⅤドラマのようなオチは一切ございません。
是非、この春の一冊に手に取って下さいませ。

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