▼書評 『人はこうして「食べる」を学ぶ』

28338098_1人はこうして「食べる」を学ぶ

著者 ビー・ウィルソン
訳者 堤 理華
出版社 原書房
発行 2017 03/27

《食べることは、学ぶこと。学ぶことは一生涯。人生死ぬまで学習だ!!》
生後4~7カ月の「味覚の窓」から最新のリバウンドしないダイエット法まで・・・
「食」を生業にしておりますと、お客様の「食」への意識が極端に変わるケースがあります。ひとつは、メディアで取り上げられた「ダイエット」食材。さらには「がん」を告知された方の食材選びです。書籍『キッチンの歴史-料理道具が変えた人類の食文化』の著者が放つ最新刊です。著者は、年間最優秀フードジャーナリスト過去3度も選ばれた経歴の持ち主です。そんな著者ならではの筆致でご自身のお子様の体験談や有識者の意見を交え、400ページを超える量感を感じさせない意欲作です。

日本では、「給食費未納」問題がたまにクローズアップされますが、イギリスの学校給食に関する2013年度の報告では、家庭から持参したランチの僅か1%しか、学生食堂が提供する食事で摂取できる栄養価を満たしていなかったという。さらには、市販の「強化離乳食」はその分析結果から、ジャガイモの裏ごしらえに卵黄を混ぜた昔風の離乳食に比べ、ビタミンとミネラルが不足していたそうです。前述の統計からも「給食費未納」なんて問題外といえます。何より「食べる」ことは、学ぶことだからです。

巷にあふれる超加工食品の数々。コンビニ、スーパー、ロードサイドetc..と枚挙に遑がありません。こうした結果、狭い味覚SFS味覚が形成されていきます。すなわち砂糖(suger)、脂肪(fat)、塩(salt)です。

では、まずは神経学的に「味覚」についてみてみましょう!!食べ物の記憶は些細なことではありません。多種多様な風味を認識します。周囲の環境とじかにつながっている中枢神経系は、鼻腔のすぐ上にある嗅球だけなのです。他方、においと風味の経路は非常に短く、篩板(しばん)という骨を介して鼻から脳へ直接伝わります。さらには、現在ヒトは全遺伝子の約2%にあたる400種類の嗅覚受容体遺伝子が存在することがわかっています。

さて、現在のとりわけお子様への「食」に対する意識で何が問題かと言えば、

やがて人は子どもではなくなり別のものを食べるようになる。

という根拠のない強い思い込みです。すなわち、大人になれば緑黄色野菜&フルーツ中心の「食」生活をしてくれるだろうという共通した認識を持っていることだと力説しています。

例えば、経済成長が著しい中国の子どもの食事情をみてみましょう。中国には「含飴弄孫(がんいろうそん)」という慣用句があります。今、中国の都市部では、とりわけ共働きが多く、50~70%といいます。よって、祖父母が子どもの面倒をする。どこかの国にも見られる光景です。その祖父母は子どもにお菓子を食べさせ、年寄りはせっせと働いしているといいます。この高齢世代の「食」への考え方は、「人生の幸福とは、好きなものを好きなだけ食べること、そして食べたいときに好きなだけ食べる」ことです。その結果が、ジャンクフードが蔓延している現在、今や中国には地球上の肥満者の5分の一が存在するといいます。ここでの問題は、「食」が戦後と間もない頃と変化した事実であり、さらにはその「食」の食べさせ方が昔のまま。つまり、—食物があるうちにたくさん食べておく—と高齢世代の子ども頃の記憶なのです。祖父母から孫への悪意のない間違った、食べ方の伝授がなされていたわけです。

食品業界のマーケティングは、心理作戦に長けています。例えば、新商品のキャッチフレーズを「健康によい」とすると「新しい」とする時より売り上げが大幅に落ちる。少年は少女より味や味覚に対しても無頓着を利用し、「少女が好む味にすれば、少年にも好まれる」製品化に対しては逆で、「少女は‶男の子‶向けの製品を受け入れる率が高いが、少年は‶女の子‶っぽいものに拒絶反応を示しやすい」です。また、生物学的にもあらゆる赤ん坊は甘味に強い親和性を示し、苦みと酸味を嫌うなどと巧みに利用し、記憶を植え付けていきます。

ジャンクフードや清涼飲料水の怖いには、肥満などへの影響プラス

それがかけがえのない無数の記憶とからみあうことが、最大の問題なのです。

しかし、レストランの経営者も大変です。例えば、2014年度の世界のベスト・レストラン50に選ばれたカリフォルニアのレストランの経営者は、「偏見を持たず、童心に立ち返って、少年の頃の夏の日を思い出すように」、「人々が共有する経験をもとに、新しい味を創造しながら、みなの心の奥底に眠る記憶を喚起するような料理を作ること」と言います。

次章では、本書のより本質に迫ってみたいと思います。