■書評 ピカソは本当に偉いのか?

25365953_1ピカソは本当に偉いのか?

著者 西岡 文彦
出版社 新潮社
発行 2012 10/20


ボク好みのタイトルである。よって本書はタイトル買いした書籍です。もしボクが企業の面接官であれば、学生諸君にこのタイトルをぶつけてみたい。今年、フェルメールの「ラブレター展」と「ジャクソン・ボロック展」を鑑賞したがまさに静と動といった印象だった。とくにジャクソン・ボロックに関しては、理解するというより見た者が「どう感じるか」っといった感じだ。っといっても「鑑賞眼」はボクにはないのですが・・

さて本書に移ろう。ピカソの代表作「アヴィ二ョンの娘たち」のみならず、ピカソの絵の前に立たされた時、皆さんはどうお感じになられるでしょうか?
①この絵は本当に美しいのか?②見る者にそう思わせる絵が、どうして偉大な芸術とされるのか?③仮に偉大な芸術としても、その絵にどうしてあれほどの高値がつくのか?④ピカソのような絵であれば、誰でも描けるのではないか?⑤そういう絵を偉大とする芸術というものは、どこかおかしいのではないか?⑥そういう芸術にあれほどの高値をつける市場も、どこかおかしいのではないか?

例えば、1932年にピカソが描いた「ヌード、観葉植物と胸像」の落札価格は、100億円。日本の銀座4丁目の土地公示価格の最高値、その立地の平米当たりの約200倍である。全く恐れ入りますといったところだ。実は、ピカソほど、生前に経済的に儲かった画家はいません。その象徴的なセリフが「私がツバを吐けば、額縁に入れられ偉大な絵として売り出されるだろう」と豪語しています。1973年、91歳でその生涯を閉じるまでにピカソが遺した作品は7万点を超え、ピカソの遺産評価額は日本・円にして約7500億円ともいわれております。それを察したのか、偶然か?フランス政府は、ピカソが亡くなる5年ほど前に相続税は物納でもよいという、通称:「ピカソ法」を立法しています。

時代の背景によるピカソの絵画。西洋において絵画がキリスト教における布教ツールだった時代、宗教改革を経て美術館収蔵品になった時代、そして印象派の時代を経て投機の対象となった時代。印象派といえば、モネ、ルノワールですが、彼らの絵は今でこそ有名ですが、新進時代の彼らの絵は二束三文でした。そこにアメリカの新興富裕層による投機市場が流れ込んできたのです。「いかに安く仕入れて高く売るか」。端的にいえば絵画バブルが起こったわけです。こうして、「前衛的な絵画」は富が富を呼び、とりわけピカソの絵はインパクトは抜群ですので「人々の心をざわめかせる絵画」として箔がつき急騰したのです。時代背景と見事に合致しまさに「運も実力のうち」といったことろでしょうか?

また、本書にはピカソの生まれ故郷を襲ったマラガの地震での出来事がその後の彼の運命を決定づけた事や、人心掌握術、複雑にして怪奇の女性遍歴etc..絵の不得意なボクにとってはトレビア満載でしかも肩肘張らずに楽しく読ませていただきました。機会があればニューヨークの美術館巡りもしてみたいものです。

最後に「ピカソは本当に偉いのか?」この答えは、その芸術は観る人々を幸せにするか?になるのではないでしょうか?