■書評 『他人のふたご』-「輸出」ベイビーたちの奇跡の物語
他人のふたご-「輸出」ベイビーたちの奇跡の物語
著者 アナイス・ボルディエ/サマンサ・ファターマン
訳者 羽田 詩津子
出版社 太田出版
発行 2016 02/12
《グローバル化時代の表裏》
はじめに・・何やら我が国では、「ゲス」という言葉が飛び交っていますね。詳細については存じあげませんが、本書は韓国を発端に物語がはじまります。訳者の羽田氏の調べによると、韓国では養子縁組が非常に多く、近年の統計のよると、1950年代初めから20万人近いこどもが養子で出されているそうです。本書にも記述されていますが、あくまでも韓国社会において未婚の母親に対する偏見が非常に根強く、その母ばかりだけではなく、その子にも偏見が向けられ、社会では生きられない、不可能になってしまうそうです。そして、もう一つが、海外の養子縁組ビジネスが儲かるということです。
本書の主人公は2人。フランス人のアナイスとアメリカ人のサムです。YuTubeでひょうな事からアナイスの友人が女優のサムを観て、なんと顔や肌、髪の色も何もかも瓜二つだったそうです。。現代のIT社会において、ここでSNS(ソーシャルネットワーク)が発揮されます。女優であるサムに対して、アナイスは何とか連絡が取れないかと?FB(フィスブック)、Instagram、さらにはツイッターと駆使し、サムにコンタクトを試みます。そうした中、誕生日が同じである事を発見!!そうです、アナイスはもしかして、自分たちは『ふたご』で生まれたのでないか?
そして遂に、アナイスからサムへのメッセージは、サムの迷惑メールを潜り抜けサムのもとへ。アナイスは、まずAEM(世界の子どもたちの友人)という協会にさらには、フランスのホルトという養子縁組の団体に、釜山で産まれた際の身体検査報告をGETします。それら写真etc..をロサンジェルス在住のサムのもとに送り、スカイプ&メール交換のやりとりに日々へと発展していきます。
25歳の女の子同士、はじめは希望と不安がきっと交錯したでしょう。興味本位の部分も無きにしも非ず。でもアナイスとサムは、信じました、もう一人の自分の可能性を。そこで、DNA検査が効果を発揮します。当然DNA検査に至っては日数がかかるわけですが。サムはロンドンに旅たちたいといらいらが募る毎日。あのアレキサンダー・マックイーン、ジョン・ガレアーノを輩出したロンドン芸術大学へ通うアナイスものとへ。
DNA検査は、カリフォルニア州立大学フラントン校の心理学教授―ふたごの研究において世界的権威のナンシー・シーガル教授が担当。ロンドンに送ったDNAとロサンジェルスからのスカイプでの結果発表。ついに一卵性双生児と番号が一致。「もしDNAが一致しなくてもお友達でいようね」とスカイプにて誓い合っていた二人のこ女の子同士。シーガル博士は、DNA検査において興味深い類似点を発見したと言います。どちらも魚嫌いで、どちらも音楽好きで、片方はピアノを、もう一方はバイオリンを。異国の地で育てられたにもかかわらず、二人とも同じIQ(知能指数)だったのです。遺伝子検査のよる詳細については後述します。これは、シーガル博士がもともとのキャリアの初期、ミネソタ大学で別々に育てられた「ふたご」の研究が礎になっているといいます。
DNAの結果発表で確信を得た二人。まずは、LA在住のサムからロンドンへ。さらには二人は生まれた韓国・第二の港湾都市、釜山で落ち合います。アナイスは一人っ子、サムにはふたりの兄がいました。アメリカの地では、彼女と家族と「感謝祭」の参加。釜山の地では、ドキュメンタリー映画を〈ツインシスターズ〉を制作し、本書によれば、ニューヨークとロサンジェルスで2015年7月に公開されたのを皮切りに、徐々にアメリカ各地で公開され、書籍化もされたそうです。さらには、アナイスが育てられたフランスの地では、26歳の誕生日を家族ともどものお祝い。アナイスの母、マリーの粋な計らいで、半分はフランス国旗ともう半分はアメリカ国旗を載せたバースデイケーキでお祝いしました。
サムが言います。「アナイスと一緒にいると丸太のように眠れる。一緒のベットに寝るときは、アナイスが右側、わたしは左側でいつも同じパターン。わたしたちが眠るときは赤ちゃん同様で、子宮の中でわたしが左側、アナイスが右側にいて鼻をおしつけあっていることを想像するの」と。
アナイスが言います。「以前はわたしは養子に出された理由をどうしても知りたかった。でも今ではサムがいるので、他のことはどうでもよくなっている。わたしたちは出発点に戻ったのだ。これからは幸せな人生を生きていける。過去を振り返る必要はないのだ。それはわたしたちの物語ではないのだから」と。
話は前後致しますが、上述したシーガル博士の研究によれば、DNA検査は200項目以上あり、21の人格に分類されるそうです。そして主要因子性格検査は、知的好奇心、協調性、勤勉、情緒安定性、外向性だそうだ。サムは、女優業の傍らビバリーヒルズでウエイトレスの職も生業としているため外向性が強く、他方アナイスは、デザインの学業のため情緒安定性が高かったそうです。その他3項目についてはほぼ一致。
上述したように、「養子ビジネス」は儲かり、他方、近年この現状が「孤児輸出国(主にアメリカへ)」という国際的な批判の的になり、韓国では里親制度に力を入れ始めたとのこと。
フランスのファッション会社へ就職が決まったアナイス。将来、アナイスがデザインした洋服でレッドカーペットをサムが歩く姿を想像したくなりました。およそ9000キロメートルを隔てた愛と奇跡の涙、涙の感動の物語でした。

著者 アナイス・ボルディエ/サマンサ・ファターマン
訳者 羽田 詩津子
出版社 太田出版
発行 2016 02/12
《グローバル化時代の表裏》
はじめに・・何やら我が国では、「ゲス」という言葉が飛び交っていますね。詳細については存じあげませんが、本書は韓国を発端に物語がはじまります。訳者の羽田氏の調べによると、韓国では養子縁組が非常に多く、近年の統計のよると、1950年代初めから20万人近いこどもが養子で出されているそうです。本書にも記述されていますが、あくまでも韓国社会において未婚の母親に対する偏見が非常に根強く、その母ばかりだけではなく、その子にも偏見が向けられ、社会では生きられない、不可能になってしまうそうです。そして、もう一つが、海外の養子縁組ビジネスが儲かるということです。
本書の主人公は2人。フランス人のアナイスとアメリカ人のサムです。YuTubeでひょうな事からアナイスの友人が女優のサムを観て、なんと顔や肌、髪の色も何もかも瓜二つだったそうです。。現代のIT社会において、ここでSNS(ソーシャルネットワーク)が発揮されます。女優であるサムに対して、アナイスは何とか連絡が取れないかと?FB(フィスブック)、Instagram、さらにはツイッターと駆使し、サムにコンタクトを試みます。そうした中、誕生日が同じである事を発見!!そうです、アナイスはもしかして、自分たちは『ふたご』で生まれたのでないか?
そして遂に、アナイスからサムへのメッセージは、サムの迷惑メールを潜り抜けサムのもとへ。アナイスは、まずAEM(世界の子どもたちの友人)という協会にさらには、フランスのホルトという養子縁組の団体に、釜山で産まれた際の身体検査報告をGETします。それら写真etc..をロサンジェルス在住のサムのもとに送り、スカイプ&メール交換のやりとりに日々へと発展していきます。
25歳の女の子同士、はじめは希望と不安がきっと交錯したでしょう。興味本位の部分も無きにしも非ず。でもアナイスとサムは、信じました、もう一人の自分の可能性を。そこで、DNA検査が効果を発揮します。当然DNA検査に至っては日数がかかるわけですが。サムはロンドンに旅たちたいといらいらが募る毎日。あのアレキサンダー・マックイーン、ジョン・ガレアーノを輩出したロンドン芸術大学へ通うアナイスものとへ。
DNA検査は、カリフォルニア州立大学フラントン校の心理学教授―ふたごの研究において世界的権威のナンシー・シーガル教授が担当。ロンドンに送ったDNAとロサンジェルスからのスカイプでの結果発表。ついに一卵性双生児と番号が一致。「もしDNAが一致しなくてもお友達でいようね」とスカイプにて誓い合っていた二人のこ女の子同士。シーガル博士は、DNA検査において興味深い類似点を発見したと言います。どちらも魚嫌いで、どちらも音楽好きで、片方はピアノを、もう一方はバイオリンを。異国の地で育てられたにもかかわらず、二人とも同じIQ(知能指数)だったのです。遺伝子検査のよる詳細については後述します。これは、シーガル博士がもともとのキャリアの初期、ミネソタ大学で別々に育てられた「ふたご」の研究が礎になっているといいます。
DNAの結果発表で確信を得た二人。まずは、LA在住のサムからロンドンへ。さらには二人は生まれた韓国・第二の港湾都市、釜山で落ち合います。アナイスは一人っ子、サムにはふたりの兄がいました。アメリカの地では、彼女と家族と「感謝祭」の参加。釜山の地では、ドキュメンタリー映画を〈ツインシスターズ〉を制作し、本書によれば、ニューヨークとロサンジェルスで2015年7月に公開されたのを皮切りに、徐々にアメリカ各地で公開され、書籍化もされたそうです。さらには、アナイスが育てられたフランスの地では、26歳の誕生日を家族ともどものお祝い。アナイスの母、マリーの粋な計らいで、半分はフランス国旗ともう半分はアメリカ国旗を載せたバースデイケーキでお祝いしました。
サムが言います。「アナイスと一緒にいると丸太のように眠れる。一緒のベットに寝るときは、アナイスが右側、わたしは左側でいつも同じパターン。わたしたちが眠るときは赤ちゃん同様で、子宮の中でわたしが左側、アナイスが右側にいて鼻をおしつけあっていることを想像するの」と。
アナイスが言います。「以前はわたしは養子に出された理由をどうしても知りたかった。でも今ではサムがいるので、他のことはどうでもよくなっている。わたしたちは出発点に戻ったのだ。これからは幸せな人生を生きていける。過去を振り返る必要はないのだ。それはわたしたちの物語ではないのだから」と。
話は前後致しますが、上述したシーガル博士の研究によれば、DNA検査は200項目以上あり、21の人格に分類されるそうです。そして主要因子性格検査は、知的好奇心、協調性、勤勉、情緒安定性、外向性だそうだ。サムは、女優業の傍らビバリーヒルズでウエイトレスの職も生業としているため外向性が強く、他方アナイスは、デザインの学業のため情緒安定性が高かったそうです。その他3項目についてはほぼ一致。
上述したように、「養子ビジネス」は儲かり、他方、近年この現状が「孤児輸出国(主にアメリカへ)」という国際的な批判の的になり、韓国では里親制度に力を入れ始めたとのこと。
フランスのファッション会社へ就職が決まったアナイス。将来、アナイスがデザインした洋服でレッドカーペットをサムが歩く姿を想像したくなりました。およそ9000キロメートルを隔てた愛と奇跡の涙、涙の感動の物語でした。