黒人は
書評
黒人はなぜ足がはやいのか 「走る遺伝子」の謎
著者 若原 正巳
出版社 新潮新書
発行 2010 6/25



スポーツの秋と言えば運動会。今年は、信州松茸が異常なほどの大豊作で、あっという間にシーズンが終わり、お正月の風物詩の箱根駅伝まで2ヶ月を切った。
ボク自身も走る事が大好きなので、今回はこの書籍をセレクト。
いまだに、目に焼きつくあの光景。ボルト、ボルト、ボルトそう、ウサイン・ボルトの陸上男子100㍍の世界新記録を更新した映像が・・・

はじめに、著者自身非常に気を使っているのだが、人種の問題が絡み、多分欧米諸国でこの書籍が、仮に出版されたら批判の的となろう。 
それほど、日本人の想像以上に人種の問題が、いまだ根が深い事がこの書籍からわかった。 

 まず人には、28000個の遺伝子があるといわれている。そのうちの一つ、スポーツ・パフォーマンス遺伝子が、「ACTN3」遺伝子である。
現在の研究では、この研究を応用すれば、自分が短距離走向きか長距離走向きか判断出来るところまで来ている。
実際、丹野麻美選手が種目距離を変更したら、なんと日本新記録を叩き出している。その丹野選手、今度のロンドンオリンピックには、800㍍で出場するらしい。

 さて、陸上男子100㍍に話を戻そう。まずは、スーパートップアスリート選手の祖先は、そのほとんどが西アフリカである。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)、マイケル・ジョンソン(USA)しかりである。
この事実は、実に悲しい過去に遡る。
そう三角貿易(大西洋三角貿易)だ。ヨーロッパ→西アフリカ→西インド諸島・ヨーロッパを一回りする貿易だ。詳細は「華麗なる交易」を参照していただきたい。

 そして、長距離については、北・東アフリカ(エチオピア・ケニア勢)が強い。 省略すると、瞬発力を要する種目は、西アフリカ勢、持続力を要する種目は、北・東アフリカ勢という事になる。

 それでは、水泳競技のお好きな方は、そうこのアスリート怪物「マイケル・フェルプス」。何しろ北京五輪で8冠の快挙を成し遂げた選手の特徴は、とにかく乳酸が溜まりにくい体質だそうだ。
これには、ミトコンドリアが関連してくる。
 現在、判明している、この手の遺伝子は「ACTN3」を含め10種類以上合わせて紹介されているが、ここではすべて紹介しきれない。

例えば、日本人はお酒に強い、弱いなどに関する遺伝子、牛乳に関する「乳糖耐性遺伝子」、競馬の種牡馬にまつわる話まででてくるので、定価¥1,050-のこの書籍は、文字通りボクにとって「小さい秋」を見つけた感じだ。

余談ではあるが、陸上男子100㍍の世界記録保持者「ウサイン・ボルト」選手の大好物は、これから日本で旬を迎える「やまいも」だそうだ。


華麗なる
参考書籍 「華麗なる交易」貿易は世界をどう変えたか