▼書評 『世界からコーヒーがなくなるまえに』

世界からコーヒー世界からコーヒーがなくなるまえに

著者 ペトリ・レッパネン/ラリ・サロマ―
訳者 セルボ貴子
出版社 青土社
2019 11/10






《市場経済の最も狂った点は、何をどうしても需要にこたえようとする点だ》
はじめに・・もう10年前になります。小職が書籍『チョコレートの真実』を読み進め児童労働・強制労働の実態を把握して時には、グッとくるものがありました。それから、とりわけ加工食品や外食産業の原産地についても食材選びについては注意を払うようになりました。

さて、本書の原題は『コーヒー革命』です。タイトルから察するとやはり気候変動に関する書籍?と思われる方も多いでしょう!!サステナブル(持続可能)、オーガニック、フェアトレード、気候変動etc..と読み手により感ずる点は多数あると思います。そして本書でもコーヒー業界でもサード・ウェーブが押し寄せているといいます。すなわち、どこで栽培されたか、生産地から焙煎まで加工プロセス全体を考慮して購買の意思決定をするという点です。朝の一杯の至福のひと時、コーヒーを飲まれる方も多いでしょう。コーヒーの発祥はエチオピアです。そして五大生産国はブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、そしてエチオピアです。消費国一位(個人当たり 年間10㎏)はどこかというと、北欧フィンランドになります。もう少し、トレビア的な事をお伝えしますと、コーヒーにもワインのマスターソムリエ(世界で240名:2017年時点)、コーヒーのケースはQレーダー資格といいます。その数は世界で約4000名です。国際的なコーヒーの品質鑑定士と講習及び試験を実施。本書でもスペシャリティコーヒーにもついても言及されています。

そして、本書を読み進めるとコーヒー栽培というものは、実にデリケートであり手間が非常にかかります。まずは土壌・火山灰地で豊かであること、さらには木陰でゆるやかに成長させること、木々の最も大切な役割は木陰と水だと力説しています。。そのためには生物多様性が文字通り良質なコーヒー豆の必要条件になります。なぜなら木々は弱肉強食の自然の循環の根幹を成し、有機微生物を呼び寄せ、微生物はまた更地に生物を呼び込みます。本書の取材元となった地はブラジルの奥地です。この地も2000年~2010年代にかけてコーヒー産出国で酷い干ばつと大雨による収穫減少になやまされているそうです。

しかし、工業化農業が蔓延するとどうなるか?ご察しの通り、

土壌にどんどん化学薬品を撒いて木々を切り倒してしまっている。化学薬品はそのまま土壌から地下水まで浸透し、すべてを殺してしまう。水辺もなくなる

と。本書に登場するFAF農場(ファンゼンダ・アンビエンタル・フォルタレザ)=環境要塞農場という意味です。たとえば、工業化農場では、1haあたり3tの収量が見込め、オーガニックのコーヒー農場では1haあたり1.5tだそうです。この違いはt単位で土壌で肥料を撒いて、遺伝子操作もしているからだそうです。これも、コーヒー豆工業化農場の実態なのです。さらにはベトナムの地では自然保護区域の土地までもコーヒー栽培地に転用されはじめているそうです。

実は、上述のFAF農場は、家族経営で切り盛りされています。コーヒー豆をどうやったら環境により優しいかを研究する母シゥヴィア、根っからの商売人のマルコス、貿易に詳しいクロシェ、弟は経理担当と。クロシェ家では“トータル・クオリティ“をコンセプトに経営をされています。つまり完全な循環。経済的にも、環境的にも、社会的にも、精神的にもサステナブルでなくてはならないと。詳細は水質、土壌の状態、混作かどうか、農場で働く人々の健康状態、農場の経営状態、活動の透明性とさらには、コーヒーの品質です。これを極めると「レス・イズ・モア」=少ないほど豊かであると、マルコスとフェリペはいいます。

何やら理想主義の内容??と思う方もいらっしゃるかと思いますが、ブラジルの農家というのは直接取引が禁じられていた経緯があります。そのため「質より量」を求められ、国が価格をコントロールし、生産者の代わりに販売し、コーヒー産業は壊滅的な打撃を受けたことがあります。また、アフリカ・ウガンダの地のコーヒー豆農家は、いまだにこの豆がエンドユーザーにどのように利用されているのか知らないとも。

SDGsが叫ばれる昨今、企業による活動も活発になってきているといいます。たとえば、フィンランドのグスタフ・パウリグ社などはUTZ認証のコーヒーに対して5~10%上乗せした買取価格を提示していることだそうです。FAF農場のすばらしい点は、トータルクオリティを駆使したそのマーケティングです(直接取引)。北欧の国々に高品質も豆のよさをわかってもらい、尚且つ農場自身も地球同様に持続可能に歩む様は、小職としては本当に参考になりました。また、小職も一人のエンドユーザーとしてエシカル(倫理的)な消費は当たり前の時代と実感しております。

ワールド・コーヒー・リサーチによると全世界でコーヒーの需要は年間2~3%の割合で増加しているそうです。しかしながら、2050年にはアラビカ種にもともと向いているとされる面積の半分、つまり1600万ヘクタールしかデリケートなアラビカ豆栽培に適した場所はないと予測されているそうです。

ボク達の身近なコーヒーから考える、持続可能な地球、農業、経営と参考になるべき箇所は多大でした。気になった方は是非、チェツクしてみて下さいませ。

メキシコ南部の農家らが、過剰農薬にノー! 最新のロイター通信社によるビデオは、⇒⇒⇒こちら

Since  1973  ASAMANA

お問い合わせ先  ASAMANA・小林農園浅間サンライン直売店
TEL  0267-24-1483
WWW: http://asamana-farm.com/