▼書評 『グローバルエリートが目指すハイエンドトラベル-発想と創造を生む新しい旅の形』

ハイエンドトラベルグローバルエリートが目指すハイエンドトラベル-発想と創造を生む新しい旅の形

著者 山田 理絵
出版社 講談社
発行 2019 06/12





さぁ旅に出かけよう!!それは、変容の旅だ!!
スマホやタブレットを駆使する現代人は、15秒何もしないでいると退屈と感じてしまうそうです。iPS細胞でノーベル賞を受賞された、その世紀の発見を京大・山中教授はお嬢様と湯船につかっていた際にこのアイデアを思い付いたといいます。また、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は、誰とも連絡を禁止するというシンクウィークを年に二回ほど設けているそうです。画期的なアイデアは、ボッとしている時に生まれるとはよく聞きますよね。

さて、本書に移りましょう。まず旅について古代ローマ時代の神学者、アウグスティヌスは「世界は一冊の本だ。旅に出ない者は、その本の一頁しか読めないだろう」。という名言を残しています。つまり、遠出もせずに近場をウロウロしているだけでは、同じ人生のページを繰り返し読んでいるのと同じで視野が広がらないということなのです。うんこれではもったいないですね。また、現代社会はアナログとデジタルの狭間で何かとストレスの多い環境です。「お金」よりも「ストレス」を制する者が人生と制すと言っても過言ではないかも知れません。そんな時は、トランスフォーマティブ・トラベル(TT)、つまり変容の旅に出かけましょう!!

本書では、世界のグローバルエリートの変容の旅の形やその方々を迎い入れるリゾート地、さらにはその最先端のサービスが著者ならではの軽やかなフットワークで描写されております。読み進めるときっと皆さまも旅に出かけたくなることでしょう。

世界のハイエンドトラベル、ラグジュアリートラベルの市場というのは全世界の旅行者のたった3%に当たるハイエンドトラベラーが、全世界の旅行消費全体の約4分の1を占めているそうです。一時期中国人の「爆買い」なる言葉が流行りましたが、実は世界のハイエンドトラベルの市場の7割弱をアメリカやヨーロッパのマーケットが占めているといいます。その方々に対する真の「おもてなし」の体制も整っているの??という我が国にサービスにも手厳しく指摘されています。

本書では、グルーバルエリートがTT(変容の旅)として非常に注目されているスポット。インドネシアのスンバ島にあるニヒワトゥが紹介されています。実はこの島はアフリカを除くと世界で最もマラリア患者の多い地域だそうです。その島が何故グローバルエリートが注目??ハイエンドな価値の創出は5点、①:手つかずの自然や偽りのない暮らし・文化を占有できる環境を守る、②:本物のソフト・アドベンチャーを楽しめる質の高いアクティビティを提供、③社会に貢献したいというゲストの欲求を満たす社会貢献の仕組みの組み立て、④:エクスクルーシブなゲストの世界観を守るマーケットコントロール、⑤自然体で同士が出合いや社交を楽しめる雰囲気や機会の提供です。一泊最低40万円もするこのスーパーリゾートは、夏休み期間は1年前から予約で埋まり、リピート率20~25%、さらには年に数回訪れるヘビーリピーターが15%も。バリ島からおよそ5時間、多くの都市から1泊のトランジットが必要な、アクセスと価格を考慮すると脅威的です。この地は太平洋アジア観光協会の観光分野で金賞を受賞しています。

本書では、さらにタイのダラ・デヴィの地も紹介されています。世界のホスピタリティ・好感度抜群のホテルにはロンドンのME London、香港のジーアッパー・ハウスと世界のグルーバルエリート達の心も満たすおもてなしが記述されています。

その上でハイエンドトラベルの価値とは何なのでしょう?!小職は、世界のトップ100に入る会社のリーダーたちがこぞって助言を仰ぐスピリチュアル・コーチのブライアン・ボール氏の言葉をお借りしたいと思います。

人間は変化に抵抗するようにできている。しかし世界が変化し続けている中で、ボク達人類のみが変化を拒み続け、今日と同じ明日が続くことを望むわけにはいかない。安定は幻想だ。ボク達は流動性と柔軟性を持ってこの変化を受け入れ、そのプロセスを楽しむ姿勢が必須だ。

ボク達の頭の中にはこれまでの人生経験が詰まっている。でもその経験からくる論理的合理的思考よりも、直感的な脳を使ったほうがより多くの神経容量にアクセスできる。ほとんどの発明は合理的思考を脱し、直感的思考に移行した中で生まれている。

つまり、旅は視野を広げ直感を磨く最適解ではないでしょうか。自分を見つめて思索共感し、学び合い、磨き合う。そしてその土地の人々と繋がり合って、高め合って、たくさんの未来を提示し、新たな思考へと誘う、さらには新たなグループをも生み出す。その時空間体験。そもそも人間の集中力というのは長くは続きません。緊張と解放というメリハリを利かせて場面転換を行い、体験・体感を禅でいう「動中の工夫」になるという。

昨日、令和元年東海地方が「梅雨明け」したもようです。さぁ夏も本番です。この夏、好奇心を持っていろいろな場所やコトに挑戦し、よいものや楽しいことに触れて目を肥やし、多様な人々に出会って感動する経験を重ねてみましょう。旅とは「遊び心」を養う絶好の機会です。

本書は観光ビジネスに携わる方には、とりわけおススメです。さらには、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』ではないですが、今日、ボク達はデジタルデバイスとスピードに急かされる毎日。自分自身から、他者との関係から、そして自然や文化から切り離されしまっている。そう思う方にもおススメの書籍です。

皆さんもぜひ、手にとって下さいませ。

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