書評 『男たちよ、ウエストが気になり始めたら進化論に訊け!ー男の健康と老化は女とどう違うのか』
男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け!ー男の健康と老化は女とどう違うのか
著者 リチャード・ブリビエスカス
訳者 寺町 朋子
出版社 インターシフト
発行 2018 09/15
《かくして、ボク達は歩く屍だ》
近年、小職が読み漁っているというより、積ん読しているのが、医療・心理学等の関連本です。今年の一皿で「鯖」が話題になったように、我が国の高齢化社会ではTV放映で話題となった健康食材は量販店では品薄となりますね。この初冬はコタツに「みかん」が話題となりましたね。
さて、本書です。男性の老化の生物学的基盤を理解するためには、進化論のレンズを通して見ることの重要性が説かれております。そんな著者はイェール大学の人類学、進化生物学の教授です。老化や病気にフォーカスした書籍は巷に溢れかえっておりますが、男性にフォーカスした点が、本書において新たな視点だと思います。男性の一生を通じて死亡率が女性より高い原因は、①ホルモン、②免疫機能、③代謝の違い です。
まず、男性は10代後半から20代初めにかけて死亡率が高い傾向が増します。男性は若い頃、しばしば分別を忘れ、自分は無敵で不死で完全無欠だと心から信じる時期があります。たとえば、危険を顧みない男性たちの行動はネット上では山ほどあります。いわば、誇示(ディスプレイ)の一つです。
それは「性的二型形質」という体力や筋緊張、そして身体全体の状態のよさをディスプレイ(誇示)し、生殖努力を行う。上述の時期と重なります。男性は、代謝が活発な組織(筋肉組織)を女性より約20%多くもっている。これは相当な代謝コストです。それでも、進化は死亡リスクを上げるが、配偶機会を得る可能性も上げることを選択したのです。
また、女性より男性のほうが、生涯にわたって消費カロリーが高い、オスや男性に特有の高い代謝率は高い死亡率の原因です。体のサイズや代謝率が 酸化ストレス と関連していることも、一生を通じてみれば、男性の寿命が短い一因といいます。すなわち、
上述が、本書が伝える男性が女性よりも寿命が短い大きな要因です。
では、本書にタイトルにもある男性の「胴回り」はどう説明するのか??一部の魚は、競争的要因や社会的要因に応じて性転換します。ヒトの男性が、筋力が衰えても脂肪に置き換わり始めたときに行動を調整するのです。例えば、狩猟採取民のアチェ族を対象とした研究結果が興味深いです。短距離、懸垂、腕立て伏せetc..どれも20代男性が最も強い、しかし狩猟の獲物や狩猟関連の技能を評価したところ、男性の狩猟の成功率は、40代で最高に達する。ヒトは大きな脳をもっています。脳は基礎代謝率の約20%を占め、大量のグルコースを消費します。
注目すべき点は、上述した筋肉の一部は悲しいかな脂肪へと変わっていきます。その脂肪にはテストステロンを「エストラジオール」という女性ホルモンに変換する酵素があるということです。この酵素によってテストステロンが女性ホルモンに変わっていく!!
事実、自然界では、比喩的な意味でも文字通りの意味でも、わが子や配偶者と接触を保つオスはめったにいません。体外妊娠をする種では、メスと同じくらい子どもの世話を行える。これが、本書のいう「父親投資」です。
男性の老化は、テストステロン濃度の減少や肥満傾向が、配偶者を探す行動を抑え、子どもや配偶者の世話を維持するこに寄与する。脂肪組織には、テストステロンをエストラジオールに変換するアロマターゼという酵素が含まれています。
事実、子どもがいる男性のほうが、子どものいない男性より長生きするだけでなく、この効果は女の子がいる男性ではさらに大きくなるというのです。
本書は、なるほどと思わせる ヒト の生存戦略がほとんど専門用語を使用せずに描かれております。
ぽっちゃりお腹にも根拠ありです。
ほとんどの哺乳類が、生殖を終えるのとほぼ同じ時期に死にます。しかし、ヒトの進化はそうではない。歩く屍と言われても問題なしなのだ。
最後に、著者は健康について次のように力説します。
がんや糖尿病、それにほかの多くの病気まで、感染症の病気だろうが、生殖生物学的機能に無関係な病気を見つけるのは難しく、
と。あっ、そう言えば「白髪」の原因は??メラニンの減少です。上述した酸化ストレスと同じメカニズム。酸化ストレスの防御メカニズムが破綻して過酸化水素水が蓄積すると、メラニンが分解されます。因みに、80歳を超えて生きられる可能性の20~25%は遺伝的多様性によるものだそうです。
書籍を読み、何を学び、どう行動するか!!
酸化ストレス対策の書籍は「細胞から若返る!テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム」 です。
歩く屍で、けっこう!けっこう!ならば人間だからできることを自問したいものです。
皆さんも是非、進化生物学の好書の本書を手に取ってみて下さい。
【関連書籍】
人はなぜ太りやすいのか-肥満の進化生物学
著者 マイケル・L・パワー/ジェイ・シュルキン
訳者 山本 太郎
出版社 みすず書房
発行 2017 07/18
レビューはこちら ⇒⇒⇒

著者 リチャード・ブリビエスカス
訳者 寺町 朋子
出版社 インターシフト
発行 2018 09/15
《かくして、ボク達は歩く屍だ》
近年、小職が読み漁っているというより、積ん読しているのが、医療・心理学等の関連本です。今年の一皿で「鯖」が話題になったように、我が国の高齢化社会ではTV放映で話題となった健康食材は量販店では品薄となりますね。この初冬はコタツに「みかん」が話題となりましたね。
さて、本書です。男性の老化の生物学的基盤を理解するためには、進化論のレンズを通して見ることの重要性が説かれております。そんな著者はイェール大学の人類学、進化生物学の教授です。老化や病気にフォーカスした書籍は巷に溢れかえっておりますが、男性にフォーカスした点が、本書において新たな視点だと思います。男性の一生を通じて死亡率が女性より高い原因は、①ホルモン、②免疫機能、③代謝の違い です。
まず、男性は10代後半から20代初めにかけて死亡率が高い傾向が増します。男性は若い頃、しばしば分別を忘れ、自分は無敵で不死で完全無欠だと心から信じる時期があります。たとえば、危険を顧みない男性たちの行動はネット上では山ほどあります。いわば、誇示(ディスプレイ)の一つです。
それは「性的二型形質」という体力や筋緊張、そして身体全体の状態のよさをディスプレイ(誇示)し、生殖努力を行う。上述の時期と重なります。男性は、代謝が活発な組織(筋肉組織)を女性より約20%多くもっている。これは相当な代謝コストです。それでも、進化は死亡リスクを上げるが、配偶機会を得る可能性も上げることを選択したのです。
また、女性より男性のほうが、生涯にわたって消費カロリーが高い、オスや男性に特有の高い代謝率は高い死亡率の原因です。体のサイズや代謝率が 酸化ストレス と関連していることも、一生を通じてみれば、男性の寿命が短い一因といいます。すなわち、
男性は女性よりも代謝率が高い傾向があるので、一生のあいだ女性よりも多くの
酸化ストレスが生じる可能性がある
上述が、本書が伝える男性が女性よりも寿命が短い大きな要因です。
では、本書にタイトルにもある男性の「胴回り」はどう説明するのか??一部の魚は、競争的要因や社会的要因に応じて性転換します。ヒトの男性が、筋力が衰えても脂肪に置き換わり始めたときに行動を調整するのです。例えば、狩猟採取民のアチェ族を対象とした研究結果が興味深いです。短距離、懸垂、腕立て伏せetc..どれも20代男性が最も強い、しかし狩猟の獲物や狩猟関連の技能を評価したところ、男性の狩猟の成功率は、40代で最高に達する。ヒトは大きな脳をもっています。脳は基礎代謝率の約20%を占め、大量のグルコースを消費します。
注目すべき点は、上述した筋肉の一部は悲しいかな脂肪へと変わっていきます。その脂肪にはテストステロンを「エストラジオール」という女性ホルモンに変換する酵素があるということです。この酵素によってテストステロンが女性ホルモンに変わっていく!!
事実、自然界では、比喩的な意味でも文字通りの意味でも、わが子や配偶者と接触を保つオスはめったにいません。体外妊娠をする種では、メスと同じくらい子どもの世話を行える。これが、本書のいう「父親投資」です。
男性の老化は、テストステロン濃度の減少や肥満傾向が、配偶者を探す行動を抑え、子どもや配偶者の世話を維持するこに寄与する。脂肪組織には、テストステロンをエストラジオールに変換するアロマターゼという酵素が含まれています。
エストラジオールは主要な女性ホルモンであり、育児に関連する行動の変化にも関与するかも知れない。
事実、子どもがいる男性のほうが、子どものいない男性より長生きするだけでなく、この効果は女の子がいる男性ではさらに大きくなるというのです。
本書は、なるほどと思わせる ヒト の生存戦略がほとんど専門用語を使用せずに描かれております。
ぽっちゃりお腹にも根拠ありです。
ほとんどの哺乳類が、生殖を終えるのとほぼ同じ時期に死にます。しかし、ヒトの進化はそうではない。歩く屍と言われても問題なしなのだ。
最後に、著者は健康について次のように力説します。
健康について理解するためには、生殖機能が生物の中心的な位置を占めていること。
がんや糖尿病、それにほかの多くの病気まで、感染症の病気だろうが、生殖生物学的機能に無関係な病気を見つけるのは難しく、
進化生物学の基本的な前提を医療専門家が受け入れるまで、多くの病気の原因は今後もなかなかわからないだろう
と。あっ、そう言えば「白髪」の原因は??メラニンの減少です。上述した酸化ストレスと同じメカニズム。酸化ストレスの防御メカニズムが破綻して過酸化水素水が蓄積すると、メラニンが分解されます。因みに、80歳を超えて生きられる可能性の20~25%は遺伝的多様性によるものだそうです。
書籍を読み、何を学び、どう行動するか!!
酸化ストレス対策の書籍は「細胞から若返る!テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム」 です。
歩く屍で、けっこう!けっこう!ならば人間だからできることを自問したいものです。
皆さんも是非、進化生物学の好書の本書を手に取ってみて下さい。
【関連書籍】

著者 マイケル・L・パワー/ジェイ・シュルキン
訳者 山本 太郎
出版社 みすず書房
発行 2017 07/18
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