■書評 「フランスはどう少子化を克服したか」

28087540_1フランスはどう少子化を克服したか

著者 髙崎 順子
出版社 新潮社
発行 2016.10.20



〈本書帯タイトル ズレてない?日本の政策〉
子どもは未来の宝です。ボクは常々そう考えております。されど、我が国において、その未来の宝〈出生数〉が減少の一途を辿り最新のデータで、2016年は統計開始以来100万人割れの見通しとなりました。合計特殊出生率は、1.46です。他方、フランスでは合計特殊出生率が、2.00とこの10年推移し「産める国・育てられる国」として注目されています。

著者自身、机上の空論ではなく実際パリ郊外で7年乳幼児を育てられてきたので、説得力を持ちえます。日本社会を見通すうえで、①子どもを増やす、②移民を取り入れる、③現状の生活より質を落とす、この3択が考えられると述べたのが、アドベンチャー・キャピタリストのジム・ロジャーズ氏です。

そこで本書です。では、著者の提言する〈子育てノウハウ集〉とは、一体どのようなものなのでしょうか?
①:男を2週間で父親にする、
②:子供は「お腹を痛めて」産まなくてよい、
③:保育園には連絡帳も運動会もない、
④:ベビーシッターの進化形「母親アシスタント」、
⑤:3歳から全員、学校へ行く  とレポートされています。

「自由・平等・博愛」を理念とするフランス。男も子育てにおいては、平等なのです。出産有給休暇が終わった男性には、11日連続の「子どもの受け入れ及び父親休暇」=「男の育休」があります。取得率は約9割を超え、この「育休申請」を勤務先の会社は断ることはできません。この点は、日本と全く異なる点です。男性の産後うつも8%ほどあるといいますから、フランスの本気度が伝わってきます。「人生で一番大切な時間だった」という父親もいます。

また、平等とともに根底にある考え方が、妊婦・乳幼児は「社会医療(メディコンソシアル)」というものがあります。さらなる負担をかけない皆で支援する考え方です。

勿論、我が国と同じ先進国とはいえ文化も異なるフランスは、階層社会です。「フランスの全てを真似よう」という意味ではなく、日本のオリジナルの子育て環境、仕事・家庭の両立を待ったなしで実行すべきです。

第三章の「保育園には、連絡帳・運動会もない」。この章では、保育士の過度な負担の現状の日本と上手く照らし合わせています。日々のお子様の行動は口頭報告、オムツの持ち帰りもありません。ある園長は言います。
「子ども達が尊重されていること、愛情を受けていると感じられていること」それ以外は二の次だと。実に最適化を図り、その一端として保育園では教育係と世話係の分業制となっています。前述の分業制などは、日本でも直ぐにでも取り入れてほしい取り組みです。

母親、保育士etc..誰かに過度に負担を強いる制度・環境ではなく、皆が皆で支えあうフランスの子育て環境には、ただただ納得させられた次第です。皆さんも是非本書をご一読下さいませ。