▼書評 「奇跡の自然」の守りかた-三浦半島・小網代の谷から
「奇跡の自然」の守りかた-三浦半島・小網代の谷から
著者 岸 由二/柳瀬 博一
出版社 筑摩書房
発行 2016 05/10
《キーワードは、やり抜く力》
ビジネスにおいての成功の鍵はなんでしょうか??それは、IQでもなく、やりぬく力ではないでしょうか!!本書は、昨今叫ばれている〈生物多様性〉に関する書籍ですが、前述したようにビジネスにおいても役立つ書籍だと感じております。それがやり抜く力なのです。
東京から京浜急行電鉄で1時間半、終点の三崎口から歩いて30分。小網代(こあじろ)地区は、奇跡の谷が存在しているのです。この場所は世界的にも「奇跡の自然」として注目の場所だっとことをボクは、本書で初めて知りました。ところで、著者の岸氏は、あのリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を翻訳された方です。岸氏の慶應大学時代の教え子が、柳瀬氏です。
今の若者はご存じかわかりませんが、1990年代我が国は、バブル時代なるものがありました。日本の国土の約25倍。アメリカの土地と日本の土地が同程度。さらには、皇居と米国・カリフォルニア州の土地価格が同程度の時代があったのです。三浦半島の小網代地区もリゾート開発の流れがありました。しかし30余りに渡り、もうその頃には小網代地区の保全がはじまっていたことに、まずは驚かされました。実は、小網代地区、歴史を遡ると面白い場所だったのです。この場所では何度も縄文土器のかけらが見つかっており、小網代の森の手前の三崎口の近くには縄文遺跡も残されております。2万年近く前の最大の氷河が過ぎ、日本列島に温暖化気候が広がるとともに、東北の日本海側から脊梁山脈を抜け、いまの八王子あたりから多摩三浦丘陵を南下してきた縄文時代の人々が、三浦半島に辿り着いたといわれております。
上述した「多摩三浦丘陵」は、著者らがその形から「いるか丘陵」と名付けました。三浦半島がその「いるかのしっぽ」のかたちに似ているからです。そして、この小網代を代表する生き物が「アカテガニ」です。小網代の谷と干潟には現在60種以上のカニが生息しており、さらには2000種以上の生物が存在しているそうです。そして、小網代の環境保全のもうひとつのキーワードが〈流域思考〉です。英語では、〈watershed〉と言います。〈水循環〉と呼ばれるサイクルは水域や大地から水蒸気が空にのぼり、雲になり、雨や雪となりまた大地へ降ります。地表へ流れる水は〈流域〉という単位で集水され、川を下り、海へ入ります。これを繰り返しています。〈流域〉は地表における水循環の単位となっている生態系という考え方が〈流域思考〉です。
上述したアカテガニは、1991年から通称:カニパトと呼ばれる、小網代を守る会の皆さんがローテーションを組みパトロールが今でも続けられています。70haの小網代の森は、2014年に開園の運びとなりました。今では、年間1000人を超える規模の有償スタッフがいるようです。訪問者の方々が、この森を自由に移動できるのは1300mの散策のみの尾瀬の湿原などと同じとのこと。この散策路は「ボードウォーク」と呼ばれています。「人工木道は、環境破壊なのでは??」いや、「もしボードウォークが無くたくさんの人が長靴を履いて湿原を歩いて回ったら、そのほうがはるかに環境破壊につながります」。小網代の〈環境保全〉考え方は、このボードウォークに凝縮されています。
町おこしのヒントでも良し!本書のようなサンクチュアリ(生物多様性の総合的な回復保全地)の参考例でも良し!ビジネスのヒントを得るのも良し!非公式ではありますが、三浦市の発表では2014~2015年に小網代周辺には推定10万人が訪れたとのこと。自然回帰できっと役立つ何か??が見つかるはずだと思います。
ボクも機会があれば、ぜひ三浦半島・小網代に足を運んでみたいと思います。

著者 岸 由二/柳瀬 博一
出版社 筑摩書房
発行 2016 05/10
《キーワードは、やり抜く力》
ビジネスにおいての成功の鍵はなんでしょうか??それは、IQでもなく、やりぬく力ではないでしょうか!!本書は、昨今叫ばれている〈生物多様性〉に関する書籍ですが、前述したようにビジネスにおいても役立つ書籍だと感じております。それがやり抜く力なのです。
東京から京浜急行電鉄で1時間半、終点の三崎口から歩いて30分。小網代(こあじろ)地区は、奇跡の谷が存在しているのです。この場所は世界的にも「奇跡の自然」として注目の場所だっとことをボクは、本書で初めて知りました。ところで、著者の岸氏は、あのリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を翻訳された方です。岸氏の慶應大学時代の教え子が、柳瀬氏です。
今の若者はご存じかわかりませんが、1990年代我が国は、バブル時代なるものがありました。日本の国土の約25倍。アメリカの土地と日本の土地が同程度。さらには、皇居と米国・カリフォルニア州の土地価格が同程度の時代があったのです。三浦半島の小網代地区もリゾート開発の流れがありました。しかし30余りに渡り、もうその頃には小網代地区の保全がはじまっていたことに、まずは驚かされました。実は、小網代地区、歴史を遡ると面白い場所だったのです。この場所では何度も縄文土器のかけらが見つかっており、小網代の森の手前の三崎口の近くには縄文遺跡も残されております。2万年近く前の最大の氷河が過ぎ、日本列島に温暖化気候が広がるとともに、東北の日本海側から脊梁山脈を抜け、いまの八王子あたりから多摩三浦丘陵を南下してきた縄文時代の人々が、三浦半島に辿り着いたといわれております。
上述した「多摩三浦丘陵」は、著者らがその形から「いるか丘陵」と名付けました。三浦半島がその「いるかのしっぽ」のかたちに似ているからです。そして、この小網代を代表する生き物が「アカテガニ」です。小網代の谷と干潟には現在60種以上のカニが生息しており、さらには2000種以上の生物が存在しているそうです。そして、小網代の環境保全のもうひとつのキーワードが〈流域思考〉です。英語では、〈watershed〉と言います。〈水循環〉と呼ばれるサイクルは水域や大地から水蒸気が空にのぼり、雲になり、雨や雪となりまた大地へ降ります。地表へ流れる水は〈流域〉という単位で集水され、川を下り、海へ入ります。これを繰り返しています。〈流域〉は地表における水循環の単位となっている生態系という考え方が〈流域思考〉です。
上述したアカテガニは、1991年から通称:カニパトと呼ばれる、小網代を守る会の皆さんがローテーションを組みパトロールが今でも続けられています。70haの小網代の森は、2014年に開園の運びとなりました。今では、年間1000人を超える規模の有償スタッフがいるようです。訪問者の方々が、この森を自由に移動できるのは1300mの散策のみの尾瀬の湿原などと同じとのこと。この散策路は「ボードウォーク」と呼ばれています。「人工木道は、環境破壊なのでは??」いや、「もしボードウォークが無くたくさんの人が長靴を履いて湿原を歩いて回ったら、そのほうがはるかに環境破壊につながります」。小網代の〈環境保全〉考え方は、このボードウォークに凝縮されています。
町おこしのヒントでも良し!本書のようなサンクチュアリ(生物多様性の総合的な回復保全地)の参考例でも良し!ビジネスのヒントを得るのも良し!非公式ではありますが、三浦市の発表では2014~2015年に小網代周辺には推定10万人が訪れたとのこと。自然回帰できっと役立つ何か??が見つかるはずだと思います。
ボクも機会があれば、ぜひ三浦半島・小網代に足を運んでみたいと思います。
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。