書評 『きょうだいリスク』-無職の弟、非婚の姉の将来は誰がみる?

33395774きょうだいリスク-無職の弟、非婚の姉の将来は誰がみる?

著者 平山 亮/古川 雅子
出版社 朝日新聞出版
発行 2016 02/28




《衝撃のOECDレポート!!》
ボクにもし、本書のサブタイトルのような弟や姉が存在していたら、即刻追い出すと言いたいところであるが。仮に重大事を抱えていなければ・・

そもそもきょうだいとは不思議な関係であろう。友達や同僚とも違う関係。喧嘩をしても自然と仲直り?というか復活している。良い意味で不思議な存在。変なところが似ているところが面白いetc..皆さんは、「きょうだいリスク」と聞いて真っ先に何を思い浮かべるでしょうか?自立できない兄弟!それも一点であることは間違いありません。ところがこの「きょうだいリスク」問題、根底には我が国の社会構造に大きな欠落があったのです。

①:やむを得ず働くことができない。②:家庭を築きたくない。③:もしくは築けない。それぞれの事情はあれど別のきょうだいから重荷と思われる状況は耐えがたく、「無言の圧力」がかかることも容易に察しえます。この事実も「きょうだいリスク」なのです。では何故本書のタイトルのような「きょうだいリスク」なるものが、問題視されるようになったのでしょうか?家族の戦後体制を3つの時代区分で捉える必要があります。①:~1954年まで「多産多死時代」②:1955~1975年を「家族の戦後体制時代」、③:2000年代は「少産少死時代」と区分します。さらに1960~1970年半ば生まれを「不安世代」と本書では位置づけております。「戦後体制世代」では、お国のインフレに伴い、そう我が国はいけいけドンドンの時代でしたのでした。雇用・経済状況も好調でしたので「親の懐」に頼らずに分家ができた時代でした。

ところが、一転バブル崩壊以降「国の懐」に頼れなくなり、きょうだい皆が家族をもつことができる時代が終焉したのです。それが「不安世代」と呼ばれる人たちです。また、同時に「きょうだい格差」も浮き彫りになり、所得や境遇により埋めがたいほどの格差も生じています。

そして、本書ではOECDリポートにより衝撃的な事実が。我が国の共働き世代の貧困削減率がなんとマイナス7.9%だったのです。この貧困削減率というのは税や社会保障制度によって貧困に陥ることをどれくらい防げるのかの指標です。この指標が我が国ではマイナスだったのです。では、何故このような事態になるのかというと、我が国は「家族」が税・社会保障が「基準」となっているからに他なりません。実は共稼ぎ世帯やひとり親世帯から徴収した税金や社会保障料が、片稼ぎ世帯に向かって一方的に流れているのが現状の日本なのです。

さらに総務省の労働力調査によると、親の同居の壮年未婚者は1980年時点では39万人(35~44歳)、2014年には308万人に達しました。
〈結婚していないきょうだいが親と同居を続けている!!〉
◎就労しているのに貧困に陥る女性、◎官製による「きょうだいリスク」、◎フルタイムでも「官製ワーキングプアに陥るリスクetc..上述したようにこのようなことを鑑みると家族だけではなく、日本〈社会〉が背負うべき新たな大きな火種が勃発しているのがわかります。

本書に掲載されている数々の事例も参考になります。親という「防波堤」があるうちにできることは、「パーフェクト・ストーム(複数の問題が一挙に押し寄せて危機的状況におちいること)」があからさまになる前に、きょうだい関係を長期的な視野を持って築いておくべきと気付かされます。親の老後の負担は、「騎馬戦型」から「肩車型」となった今、カバンに一冊。ぜひ本書を手にしてみてくださいませ。