■書評 『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』
この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた
著者 ルイス・ダートネル
訳者 東郷 えりか
出版社 河出書房新社
発行 2015 06/30
〈発明の成功を左右すのは、必ずしも機能の優劣ではない!!〉
ボクはこの書評をpcで書いています。モノが巷に溢れ、水や電気に苦労せずに恩恵を受けています。だが、もし小惑星の突然の衝突により今の文明が消えることになったらどうでしょうか?終末期を描写するSFや映画など少なくないのも事実です。
本書は、その生き残った人々へ届ける手引書です。思い起こすのが、3.11の東日本大震災です。上述したもの以外に食料、衣服、医薬品etc..実際に被害にあわれた方々は如実に実感されたかと思います。しかし、本書の内容は、残念ながら支援物資は届きません。いったいどうやって文明再興するのでしょうか?また、実際の問題としてできるのでしょうか?その難題に挑んのが、著者のルイス・ダートネル氏です。その著者はレスター大学の特別研究員で、宇宙生物学を研究する傍ら科学の普及活動にも携わっています。
では、真っ先に駆け込むべき場所は??それは図書館です。実は文明再興といってもネアンデルタール人に戻るわけではありません。その目的は他らなぬ「知識」です。知識をいかに智慧に変えるのかも大切になりますが、著者の言葉にもあるように「科学の本質は、自分が間違っていたことを繰り返し認め、新しいより包括的なモデルを受け入れることにあるので、その他の信念体系とは異なり、科学の実践はボク達の物語が時間を経るにつれて着実により正確に保証することである」と。
それでは、衣・食・住をどのように築いていけば良いのでしょうか?実はボクが前々から訪れてみたい場所が、ロンドン郊外にあるウエストサンセット州の「ミレニアム・シード・バンク」があります。この場所には核爆弾に耐える地下複数階の倉庫に何十億もの種子が格納されています。詳細については、書籍「パンドラの種-農耕文明が開け放った災いの箱」をご参照下さいませ。
現在の農業従事者は、一人当たりおよそ50人分を養うのに十分な食料を生産しておりますが、文明再興後は、
喫緊に一人で10人分までの食料を引き上げなければならないといいます。ヒトの進化の一つに「火」があります。狩猟採集民族から定住社会になったのもその影響です。その他に窒素、リン、カリウムが欠かせません。これは、動物やボク達ヒトの排泄物に含まれています。意外にもうれしいほど単純だったりするのです。ただし、現代農業は実際食べている食料1カロリーのために、およそ10カロリーの化石燃料エネルギーを消費しています。これは、無理な話になり、有機農産物への移行が必然的に行われるようになります。また、缶詰製品も忘れてはならない食料となります。
前述した農業の他にも、医薬品、物質、材料、エネルギー、輸送機関、コミュニケーション手段etc..と高校の科学の授業から応用のような事柄を含めそれぞれの分野においての重要な技術がまとめられています。例えば、ハンドソープと化した「石鹸」。この物質を手にするだけで、現代の発展途上国における保険教育から、胃腸、および呼吸器系の感染症の半分近くを防いでいるといわれております。その素となっているのが、アルカリです。すなわち、「灰」に立ち戻ればよいのです。
では、現代社会において無くては困る「スマホ」の代替手段は何になるのでしょうか?それは「蓄電器」と「インダクター (コイル)」を利用することである。これにより、これを素にしているのが、民放ラジオ、テレビ局、航空管制、そして携帯電話etc..である。因みに20世紀で意味のある技術的進歩として一番活躍したのが、アンモニアであり、硝酸、硝酸塩である。文明を支えた化学の礎石だ。
科学とは、どうやってわかるようにするのかというものなのだ。だからこそ、「知識」の一つに科学的検証方法が必要不可欠であることは、言うまでもないだろう。
本書は2015シーズン、間違いなく屈指のサイエンス本である。

著者 ルイス・ダートネル
訳者 東郷 えりか
出版社 河出書房新社
発行 2015 06/30
〈発明の成功を左右すのは、必ずしも機能の優劣ではない!!〉
ボクはこの書評をpcで書いています。モノが巷に溢れ、水や電気に苦労せずに恩恵を受けています。だが、もし小惑星の突然の衝突により今の文明が消えることになったらどうでしょうか?終末期を描写するSFや映画など少なくないのも事実です。
本書は、その生き残った人々へ届ける手引書です。思い起こすのが、3.11の東日本大震災です。上述したもの以外に食料、衣服、医薬品etc..実際に被害にあわれた方々は如実に実感されたかと思います。しかし、本書の内容は、残念ながら支援物資は届きません。いったいどうやって文明再興するのでしょうか?また、実際の問題としてできるのでしょうか?その難題に挑んのが、著者のルイス・ダートネル氏です。その著者はレスター大学の特別研究員で、宇宙生物学を研究する傍ら科学の普及活動にも携わっています。
では、真っ先に駆け込むべき場所は??それは図書館です。実は文明再興といってもネアンデルタール人に戻るわけではありません。その目的は他らなぬ「知識」です。知識をいかに智慧に変えるのかも大切になりますが、著者の言葉にもあるように「科学の本質は、自分が間違っていたことを繰り返し認め、新しいより包括的なモデルを受け入れることにあるので、その他の信念体系とは異なり、科学の実践はボク達の物語が時間を経るにつれて着実により正確に保証することである」と。
それでは、衣・食・住をどのように築いていけば良いのでしょうか?実はボクが前々から訪れてみたい場所が、ロンドン郊外にあるウエストサンセット州の「ミレニアム・シード・バンク」があります。この場所には核爆弾に耐える地下複数階の倉庫に何十億もの種子が格納されています。詳細については、書籍「パンドラの種-農耕文明が開け放った災いの箱」をご参照下さいませ。
現在の農業従事者は、一人当たりおよそ50人分を養うのに十分な食料を生産しておりますが、文明再興後は、
喫緊に一人で10人分までの食料を引き上げなければならないといいます。ヒトの進化の一つに「火」があります。狩猟採集民族から定住社会になったのもその影響です。その他に窒素、リン、カリウムが欠かせません。これは、動物やボク達ヒトの排泄物に含まれています。意外にもうれしいほど単純だったりするのです。ただし、現代農業は実際食べている食料1カロリーのために、およそ10カロリーの化石燃料エネルギーを消費しています。これは、無理な話になり、有機農産物への移行が必然的に行われるようになります。また、缶詰製品も忘れてはならない食料となります。
前述した農業の他にも、医薬品、物質、材料、エネルギー、輸送機関、コミュニケーション手段etc..と高校の科学の授業から応用のような事柄を含めそれぞれの分野においての重要な技術がまとめられています。例えば、ハンドソープと化した「石鹸」。この物質を手にするだけで、現代の発展途上国における保険教育から、胃腸、および呼吸器系の感染症の半分近くを防いでいるといわれております。その素となっているのが、アルカリです。すなわち、「灰」に立ち戻ればよいのです。
では、現代社会において無くては困る「スマホ」の代替手段は何になるのでしょうか?それは「蓄電器」と「インダクター (コイル)」を利用することである。これにより、これを素にしているのが、民放ラジオ、テレビ局、航空管制、そして携帯電話etc..である。因みに20世紀で意味のある技術的進歩として一番活躍したのが、アンモニアであり、硝酸、硝酸塩である。文明を支えた化学の礎石だ。
科学とは、どうやってわかるようにするのかというものなのだ。だからこそ、「知識」の一つに科学的検証方法が必要不可欠であることは、言うまでもないだろう。
本書は2015シーズン、間違いなく屈指のサイエンス本である。
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