■書評 AIの衝撃-人口知能は人類の敵か

26617635_1AIの衝撃-人口知能は人類の敵か

著者 小林 雅一
出版社 講談社
発行 2015 03/20




《次のビジネスの主戦場は、AIか?》
まず、AIとは、(Artficial Intellgense)の意味である。チェスにおいてコンピュータvs.人間では、コンピュータの方が勝利するケースが当たり前と認知されている。また、現代社会において溢れる大量のデータ、いわゆる「ビックデータ」が生み出す巨大な富は、皆さんも良くお聞きすることと思います。現代のAIの機械学習はという技術は、そのビックデータを分析し、そこからさらにビジネスに役立つ何らかのパターンを見出すために使えるのです。

そして、IoT(すべてのモノがインターネットにつながる)と呼ばれる時代に突入した現代社会に入ったことと見るべきでしょう。ウェアブル端末、スマートホーム、さらには、スマートグーリッドのような電力網まで拡がりを見せようとしています。

本BLOGの書評で、著者:加藤 崇「未来を切り拓く5ステップ」を以前ご紹介させていただきましたが、本書にも加藤氏の記述が記載されております。その話は端的に言えば、「グーグル社に買収された、東大初のベンチャー企業」です。今、グーグル、フェイスブック、アマゾン、MS社などは、AI(人工知能)にしのぎを削っています。何故か?昨今、重宝されている職種に「データ・サイエンティスト」があります。AIの見つめると、この職種さえも機械にとって代わると言われているからです。よって、上述した企業は、この先をみて人材の青田狩りをしております。例えば、グーグル社はデープラーニング技術を専門にしている英・ベンチャー企業(2014年1月現在、売上げも製品さえ出しておりません)を推定700億円を投じて買収しました。本書によれば、2014年時点で本格的なディープランニング(深層学習)システムを開発できる技術者・研究者は世界広しと言えども、僅か50名に留まるそうです。よってその方々の給与は、NFLのスパープレイヤー級といわれております。さらには、この卵たちは、学生です。スタンフォード大学など現在、機械学習に関連した学生が非常に多いそうです。

そして、今後何が起こるのか?海馬を損傷した患者が未来も想像できないようなことを発見しました。つまり海馬は過去の事柄の未来を描くための橋渡しの役割を果たしていることが、デミス・ハッサブ氏によって解明されました。アイフォーンのSiri(音声システム)は、もう皆さんにおなじみですが、次は「自動言語処理」といわれております。例えば、上手くできたら褒め、失敗したら叱る。まるで普段子どもの面倒をみている光景ですが、ディープマインドが開発したAIは、プログラムはなんと、その種のモチベーションを与えただけで、どんどん成績を向上させ、「自己学習」できるといいます。何と言ってもこの世界は、未知なのですから、未知だからこそ、可能性も大なのです。

上述した「自己学習」など、ディープランニングの最大の長所は、「特徴(特徴ベクトル)」と呼ばれる変数を人間から教わることなく自力で発見する能力にあるとされています。この能力は「スーパー・コーティング」などと呼ばれています。ボク達の物件選びのデータ情報から始まり、ヘッジファンドの売買取引システム、さらには新薬の開発などと、最低でも10個~ときには何十万にも上る変数を指定する必要があります。

よって、前述したデータを人間に任せていたわけでは、膨大な時間がかかりますし、うっかり間違った変数を選んでしまう危険性もあります。この面倒な作業を人間の代わりにやってくれる最初のAIになるといわれております。

本書では、AI(人工知能)が進み、今後10~20年以内にコンピュータに奪われる職種(データ入力、金融機関の窓口係りetc..)などパーセンテージのご紹介や、AIに対する懸念、例えば、現在自動運転自動車が、蠅を巨大障害物として感知するケース。また、上述したグーグル社が次々と企業買収を行っていけば、スマートホームにおいては、グーグル社に完全に「個人情報」を握られるケースも考えられます。他方、日本ではソフトバンク・トヨタ車のAIが紹介されているのみです。後は、福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、東芝・日立社、鹿島・清水建設などは、「高度な重機」感にシフトしています。

かつて、ドコモ社の「i-モード」で、携帯分野の足掛かりになったのは確かですが、その後当時の経済産業省にディファクト・スタンダードの予測がはずれました。AIと脳科学による進化は間違いなく起こり得るでしょう!その時の日本企業が立ち位置が今から、懸念されますが、AIは、もともとあの「ベイズの定理」から元だといわれております。本書は、AIに関する、過去・現在・未来と描かれた好書です。

ぜひ、本書を通して近未来に考えられる世界をご確認くださいませ。

【関連書籍】
26454693_1ロボット革命―なぜグーグルとアマゾンが投資するのか

著者 本田 幸夫
出版社 祥伝社
発行 2014 12/10