■書評 幻滅-外国人社会学者が見た戦後日本70年

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著者 ロナルド・ドーア
出版社 藤原書店
発行 2014 11/30




今夏、安倍総理が打ち出した戦後70年談話についてを議論する有識者会議のメンバーが決まった。日本郵政社長の西室氏を座長にバランス重視の人材だという。

さて、著者は「親日家・知日家」と呼ばれた1925年生まれの社会学者、ロナルド・ムーア氏。過去には、書籍「日本型資本経済と市場経済」の衝突などを出版されている。有識者の間では、日本通として有名ということを本書で初めて知った。90歳近くにしてこのパワーには、本当に頭が下がる。本書の帯には、「『親日家』から『嫌日家』へ!?」記述されていて、日本における著者自身の1950年代からの感情の移る気も記されている。

英米に対するボクから見方は、徹底した「市場原理主義」が頭にこびり付いていたのだが、全く著者の見解が真逆だったので正直驚かされた。第一部から第六部のアベノミクスまでその指摘はじつに鋭く、日本人との人脈もかなり多彩である。初来日した際は、「あまりに魅力的な異邦人社会」であり東京の日常を調査し、農地改革の時は、山形、島根、山梨まで自ら足を運び研究を続けた。

また、池田内閣の所得倍増計画は、ケインズのいうアニマル・スピリットより「倍増」という言葉が効果があったと回想したり、60年代の日本平等主義時代の当時の東京都・教育長だった小尾氏の機会均等も本書でご確認いただければ、番町小学校⇒麹町中学校⇒日比谷高校⇒東京大学へのエリート・コースがいかにナンセンスだったのか。お分かりいただけよう。

著者が農業総合研究所に籍をおいていた際には、政府税制調査会・農業審議会・米価審議会の会長、東畑精一やIBJ(日本興行銀行)の中山泰平氏をそっぺいちゃんと呼ぶ間柄であったことからも著者の人望・信用も高かった点もうかがい知れる。そんな眼力の持ち主による著者の我が国の転換点は一体どこにあったのか?
それが、本書のタイトルであるのだが、ちょうどレーガノミクス、サッチャリズムの時期と重なり、鈴木善幸総理の時代日米安保体制が「日米同盟」と呼ばれるようになった時が分水嶺だったと分析している。その内閣を引き継いだのが中曽根内閣である。

さらには、バブル崩壊を含む3回の危機を乗り切った我が国の分析は、時には経済学者。例えば、バブル崩壊にもっとも有名な倒産は山一證券のそれだったわけであるが、他方米国においてはエンロン・ワールドコムだ。
「アメリカの不祥事は役員が自腹を肥やすためにインチキな会計をする。日本の不祥事は、主として会社のためにするインチキだ」。とズバリである。「憲法絶対反対」という理論に固執せず、むしろ憲法改正を行い本当の憲法にしたほうがいいとか、時には外交専門にと、上述したように本当に著者の見解は傾聴に値し、しかも核心をついている。

ただ、「アベノミクス」の提言の項目には1~2箇月後にインフレ目標を4~5%する著者の提言には、私的には納得がいかなかった。とはいえ、今ではロンドン、ハーバード、MIT大学で教鞭を取りながら、戦後日本のバイタリティ溢れる指摘にはただただ、頭が下がるばかりである。
皆さまもぜひ、ご一読してみてくださいませ。