■書評 スズメ-つかず・はなれず・二千年

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著者 三上 修
出版社 岩波科学ライブラリー
発行 2013 10/04



《Q:スズメの重さはどの食材と同じくらい?①トマト、②卵、③みかん、④ピーマン 答えは文中に》

ボクが最近身近で見た鳥ですぐに思いつくのは、「カラス」である。うん「スズメ」あまり身近すぎて見過ごしているのかも知れない。本書は誰もが知っているであろう「スズメ」の生態が紹介されている書籍である。このサブタイトルが実に的を得ていて、岩波科学ライブラリーの“生きもの”編には“ハズレ”無しといったところだ。

さて、本題に移ろう。スズメの鳴き声は「ちゅんちゅん」と皆さまにもお馴染みである。そして電線などに小鳥が5羽以上で群れていて屋根の上などにも止まっている。著者は、2008年から鳥・主にスズメの研究を始められたそうであるが、今では電車の中からでもスズメの「巣」を確認できるという。しかし動植物を研究するうえで雌雄の区別が必要不可欠のひとつであるが、見た目ではわからないという。そこで、雀の涙ほどの血を採決してのDNAの結果ではボク達人間と逆だそうだ。

本書で初めて知った面白い箇所では、スズメは平均して晴れの日には日の出の17分前、曇りの日には11分前、雨の日にはその直前に鳴き始めるという。また、産卵する「止め卵(とめう)」英語ではodd colored egg(奇妙な卵)の研究結果はまだ解明されていない。その「止め卵(とめう)」とは、普通の鳥では、すべての卵が同じ色に塗られるのに、産卵する最後の卵だけ色が違い薄い。さて、その後産卵を終え孵化し本書によれば、100個の卵のうち巣立ちを迎えられるのは、約半分ほど。そして一羽のスズメの重さはピーマン一個くらいにまで成長する。よって冒頭の答えは、④のピーマン(約25g)である。

それでは、本書のサブタイトルであるが、そのつかず・はなれず。本書によれば日本では約6000種の鳥が記録されていて、人にべったりなのは「スズメ」と「ツバメ」くらいだという。ゴミ荒らしの印象が強い「カラス」も加えてもいいと思うのだが・・では、何故スズメは、人に寄り添うのか?これはタカ、ヘビ、イタチなどの天敵を避けるためだという。これらの生きものは人を嫌うので、そこで人のそばで繁殖する。それでいて先述した生きものよりも人を警戒するという。何か矛盾している気がするがその理由(わけ)は、日本人は、少なくとも昭和初期に入ってから毎年、食用・駆除のために数百万羽のスズメを捕まえてきた経緯があるからだそだ。しかし最近では「手取りスズメ」を東京では見られ警戒心も薄れてきているとのこと。

そんなスズメですが、古事記や枕草子やさらには、「舌切りスズメ」ように動物報恩譚(人が動物を助けて、その恩返しを受ける)は馴染みがありますよね。古事記では、いろいろな鳥が登場しますが、スズメはお米と結びつく箇所に登場しますから、やはりサブタイトルに一致するわけです。

ところで、身近であるスズメは日本にどのくらい生息しているのでしょうか?飼育下では約15年ほど生き、自然環境下では約6年と3カ月。著者は「巣」の数から逆算しておおよその生息数をはじき出しました。約1800万羽!!おおよそといえども今まで誰も知らなかったわけですから意味のあるものだと思います。しかし、昨今スズメの生息数は激減しておりこの20年で半減したそうです。上述したようにスズメは人に離れず。ボク達の住まいの耐震性が強化され、プレハブアパートから鉄筋・鉄骨アパートになり、そう「住宅難」が一因だそうです。

そんな著者が昨年、伊勢神宮に行った際に境内には営巣が見られたとのこと。きっと安堵とともに愛すべき隣人の鳥と再確認されたことと思います。これから暖かくなり「桜」の季節になります。スズメは「盗蜜」です。メジロのように、蜜をもらう代わりに、花粉をくちばしや顔に付け別の花に受粉する役割はしません。ちょっといたずらっ子ですね。そんな機会に雉+隼+小さい=スズメの生態を観察してみてはいかがでしょうか。