■書評 パンデミック新時代-人類の進化とウイルスの謎に迫る
パンデミック新時代
著者 ネイサン・ウルフ
訳者 高橋 則明
出版社 NHK出版
発行 2012 11/25
今般、中国本土で感染が広がっているN7H9型・鳥インフルエンザの感染者が112人を超え、このうち死者23人の方々が亡くなった。よって積書に埋もれていた本書を引っ張り出し、即読了した次第だ。本書に登場する、ウイルス学者の権威ロンドン大学のジョン・オックスフォード教授によれば、パンデミックは鳥インフルエンザが原因による可能性が一番高いと述べている。今まさに、中国では嵐が起きている状態かもしれない。よって本書の趣旨は迫りくる嵐について理解することであろう。
さて、本書の移ろう。著者は、2011年「タイム誌」で世界でもっとも影響力のある100人に選ばれた気鋭の生物学者で「ウイルスハンター」とも呼ばれ、実際現場第一主義を貫きマラリアにも3度も感染している。著者が一番注目したのは、「微生物」である。例えば人間で考えてみよう。細胞の数で言えば、頭のてっぺんからつま先まで約10%が人間だ。ほかの90%はボク達の皮膚を覆い、腸内にすみ、口の中で繁殖する細菌なのだ。
よって本書は、人類史の大きな出来事が、人類と微生物にどのような影響を与えたか大きく割かれている。例えば、よく引き合いに出されるエイズウイルスは、チンパンジーからヒトに移動した。なんと人類が20万年かけて拡散の歴史をなぞったことになる。何故、本書のサブタイトルに「進化」が掲載されたのか?次の点ではっきりする。類人猿だったボク達の祖先が二足歩行を獲得し、サバンナに進出したことにより人類に共生する微生物は減ったが、同時に我々の持つ病原性微生物に対する抵抗力も喪失させた。
その後、狩猟するようになり獲物の解体過程などを通して病気が移ることになったという。よってヒトが罹患するほとんどが、動物に由来すると著者は見出した。そして、グローバル時代の現在、交通手段が発達し、本書によればトラックの運転手が一番罹りやすいそうだ。また靴底へへばり付いたウイルスは地球を縦横無尽に行き来する。現在の中国では、メディアの映像を見る限り人口増加による都市化と家庭での家畜の飼育もパンデミック
の影響を起こす場を提供しているといえるだろう。
今世紀に入って記憶に新しいSARS(重症急性呼吸器症候群)も中国西部から航空機などを利用すれば伝染速度も速くあっという間に世界へ・・
また、本書ではオウム真理教による炭疽菌による「バイオテロ」も記述されているが、やはり微生物によるパンデミックが脅威だと力説する。著者は、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の終身在職権を放棄し「世界ウイルス予測」を立ち上げた。それは、IT。皆さんが所有している「モバイル」からの情報を駆使し、インターネットから流れる最新の情報を解析して、大規模・急速な流行突発=アウトブレークの存在を検知し、拡散を防ぐシステムに勤しんでいる。
新顔のウイルスとワクチンの闘いはイタチゴッコ。しかし思いのほか著者がウイルスに楽観的だったのも本書において印象的だ。ともあれ、まずはボク達は最低限のリスク管理能力を備えておくべきであろう。

著者 ネイサン・ウルフ
訳者 高橋 則明
出版社 NHK出版
発行 2012 11/25
今般、中国本土で感染が広がっているN7H9型・鳥インフルエンザの感染者が112人を超え、このうち死者23人の方々が亡くなった。よって積書に埋もれていた本書を引っ張り出し、即読了した次第だ。本書に登場する、ウイルス学者の権威ロンドン大学のジョン・オックスフォード教授によれば、パンデミックは鳥インフルエンザが原因による可能性が一番高いと述べている。今まさに、中国では嵐が起きている状態かもしれない。よって本書の趣旨は迫りくる嵐について理解することであろう。
さて、本書の移ろう。著者は、2011年「タイム誌」で世界でもっとも影響力のある100人に選ばれた気鋭の生物学者で「ウイルスハンター」とも呼ばれ、実際現場第一主義を貫きマラリアにも3度も感染している。著者が一番注目したのは、「微生物」である。例えば人間で考えてみよう。細胞の数で言えば、頭のてっぺんからつま先まで約10%が人間だ。ほかの90%はボク達の皮膚を覆い、腸内にすみ、口の中で繁殖する細菌なのだ。
よって本書は、人類史の大きな出来事が、人類と微生物にどのような影響を与えたか大きく割かれている。例えば、よく引き合いに出されるエイズウイルスは、チンパンジーからヒトに移動した。なんと人類が20万年かけて拡散の歴史をなぞったことになる。何故、本書のサブタイトルに「進化」が掲載されたのか?次の点ではっきりする。類人猿だったボク達の祖先が二足歩行を獲得し、サバンナに進出したことにより人類に共生する微生物は減ったが、同時に我々の持つ病原性微生物に対する抵抗力も喪失させた。
その後、狩猟するようになり獲物の解体過程などを通して病気が移ることになったという。よってヒトが罹患するほとんどが、動物に由来すると著者は見出した。そして、グローバル時代の現在、交通手段が発達し、本書によればトラックの運転手が一番罹りやすいそうだ。また靴底へへばり付いたウイルスは地球を縦横無尽に行き来する。現在の中国では、メディアの映像を見る限り人口増加による都市化と家庭での家畜の飼育もパンデミック
の影響を起こす場を提供しているといえるだろう。
今世紀に入って記憶に新しいSARS(重症急性呼吸器症候群)も中国西部から航空機などを利用すれば伝染速度も速くあっという間に世界へ・・
また、本書ではオウム真理教による炭疽菌による「バイオテロ」も記述されているが、やはり微生物によるパンデミックが脅威だと力説する。著者は、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の終身在職権を放棄し「世界ウイルス予測」を立ち上げた。それは、IT。皆さんが所有している「モバイル」からの情報を駆使し、インターネットから流れる最新の情報を解析して、大規模・急速な流行突発=アウトブレークの存在を検知し、拡散を防ぐシステムに勤しんでいる。
新顔のウイルスとワクチンの闘いはイタチゴッコ。しかし思いのほか著者がウイルスに楽観的だったのも本書において印象的だ。ともあれ、まずはボク達は最低限のリスク管理能力を備えておくべきであろう。
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