■書評 空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略

25261111_1空洞化のウソ

著者 松島大輔
出版社 講談社現代新書
発行 2012 07/20



《見えた?!日本経済復活の道しるべ》
「TPP(環太平洋戦略的経済協定)」への参加を大手マスコミは急いでいる。又、TPPへの参加が日本にとって是か非かネット上では意見が様々である。TPPへの主な参加への分野として、農業・医療とフォーカスされているわけであるが、その前に日本最古の護送船団業界=化石業界。大手新聞各社にはにまずはクロスオーバーシップにメスを入れ自ら死ぬほど自由競争を行った上で他産業への提言を行っていただきたいとボクは思う。

さて本題に移ろう。閉塞感漂う日本経済。「失われた○○年、空洞化」は、その象徴する言葉ではないだろか?
あの3.11東日本大震災でサプライチェーンがストップしたように、主要な部品は日本で生産されていることが証明された。現に2011年のデータによれば、実に79.8%の日本企業が日本でしか調達できない材料・部品があるそうだ。よって「日本入っている」商品は、ボクの想像以上に世界各地に出回っているのであろう。

ゆえに、著者は中小企業を筆頭にタイやインドなどの「新興国」に進出することを本書で提言している。上述したように主要な部品は、日本で生産されている。それ以外の製品の受注をどんどん新興国から獲得してくれば、日本での主要部品に携わるヒトも増え、またバックオフィス(事務職)も増えるというわけだ。
では、なぜタイやインドなどの新興国か?これは皆さんも察しできると思うが、アジア開発銀行の試算によれば少し先の話になるが2050年には、アジアが世界のGDPが約半分を占めるという。これは、世界各国の社長さんもご存じなわけで、あとはいかに現地化するにかかっている。

そのために必要なマーケティングは、供給サイドの「プロダクト・アウト」ではなく、「マーケット・ブル型」だ。
品質での勝負でもなく、新興国といって価格の勝負でもない。例えばタタ・モーターズが開発し、20万前後で販売した自動車NANO。スズキ自動車に対抗?そうではないのだ。実はインドでは4人乗りのバイクがあるそうだが、雨の日には、濡れてしまう。そこでタタ・グループの総帥が開発を促したそうだ。
まさに「マーケット・ドブリン型『市場は神様』」のマーケティングである。
著者は、日本が欧米各国に比べこの「新興国」の現地化の遅鈍さに嘆いているが、エアコンのパナソニックやゼネコンの大林組、インドの山奥まで浸透している味の素などの成功例なども紹介している。他方中小企業もデンソーの子会社などは、12社合同で中国など進出している企業郡もある。

では、ボクの携わる「食」は、どうだろうか?これがスゴイ。アジア各国では健康志向の影響で日本の味噌、長いも、博多のイチゴの「あまおう」、メロンは原産地まで輸出している。「長いも」については、買い負け状態である。まだまだ本書を通して当園直売所のカイゼンを改めて見直すきっかけとなった本書であるが、大マスコミの報道の海外進出=空洞化の本質をしっかり見極めなけばならないと痛感した。