■書評 サムライと愚か者暗闘 オリンパス事件

03535556サムライと愚か者暗闘 オリンパス事件

著者 山口義正
出版社 講談社
発行 2012 03/28



写真の愛好家の中では、オリンパス製のカメラは伝統的で青色の発色が綺麗で自然な青を表現し、そんな青の色を称えて「オリンパス・ブルー」とういう言葉まであったそうだ。
しかも、なりたくてもそうは採用されない日経225採用銘柄の名誉のある会社だった。
皆さまもご存じのように内視鏡のシェアは世界一。ボクのデジカメもオリンパス製だった。そこで今日はこの書籍をセレクト。

「日本人はなぜサムライと愚か者『イディオット』がこうも極端に分かれてしまうのか」談マイケル・ウッドフォード
本書は、自社をなんとか救いたい、健全でありたいそんなサムライ社員が元格付け情報センターアナリストで現・ジャーナリストの著者に話が持ち込まれストーリー(事件)が展開する。
そして、この社員が持ち出した内部資料をもとに会員制月刊誌「ファクタ」に杜撰できな臭い資料が持ち込まれた。著者はその際、大手新聞社や雑誌・週刊東洋経済などに全く取り合ってもらえなかった事に嘆いている。

急展開するのは、英国で実績を上げ社長に就任したマイケル・ウッドフォード氏がその座についてからである。一気に25人抜きの社長就任であった。
これには、証券各社のアナリスト達も喜色のレポートを書きたてた。ボクは本書で初めて知ったのだが、証券市場では、オリンパスの法則があるらしく業績が悪化しても株価が下がらないらしい。

月刊誌「ファクタ」を元にウッドフォード氏は、この不正経理を取締役会で議題にしようとしたが、新宿本社組に拒否され全く取り合ってもらえず解任。さらに著者は、この内部資料を元にオリンパス社の広報にこの不正経理の質問状をぶつけるがだんまり、IR室も同様だったという。
しかし、ウッドフォード氏は正義感に溢れる男の中の男だった。決して社長解任の恨みでもなく「正義」に徹しウッドフォードは英国の重大不正捜査局(SFO)に話を持ち込み英・フィナンシャル・タイムズが全世界にこの件を発信した。それからだ、日本のマスコミ各社が一斉に動き出したのは・・・

結局、第三者委員会が設けられ、その結果バブル期の財テク失敗を過大な価格で企業買収で穴埋めされたことがはっきりする。事実が明らかになり、日本のマスコミ各社が取り上げ冒頭の社員と著者は、喜びではなく何か言葉にできない虚しさに襲われたという。監査法人、メインバンクがなぜ、約1500億円もの額を見逃したのか、馴れ合い、ゼネコンの談合を思い出す。
そして、ウッドフォード解任の際の菊川元会長の言葉は、「あなたに日本の会社はわからない」と発したそうだ。そう実は、菊川はこの不正を上手くすり抜ける手腕を期待していたのだ。そんな事はグローバール企業に通用するはずがない。(勿論、どの会社にも言えることではあるが・・)

1999年、伊藤忠商事の当時の宇羽社長は、約4000億円もの特別損失を計上した。他方オリンパス新宿本社
は、キャリア官僚にたとえられその他の社員は、ノンキャリア組。蚊帳の外であった。本社では、菊川に媚を売り
30代で部長昇進のケースもあったそうだ。

この書籍で問題が明らかになったのは、①公益通報者保護法が機能していない事、②日本のマスコミの対応の遅さ(スポンサーとの絡み) ③正義感の欠如。
日本経済が眉唾もので見られたこの重大事件、著者とウッドフォード氏の面会時間は僅か20分だったそうだ。そして、本書を読み終えた日、2012.04.27 前述の法外な価格で買収した子会社3社の解散のニュースが配信された。オリンパス社のバブルの清算がやっと終えたということである。

この、サムライ社員は今、何を感じているのであろうか?