■書評 宇宙で最初の星はどうやって生まれたのか

03470589宇宙で最初の星はどうやって生まれたのか

著者 吉田直紀
出版社 宝島新書 
発行 2011 10/22



今年は、金環日食が5月21日に日本では25年ぶりに見られるそうだ。約8300万人にそのチャンスがある。
5月にはきっと宇宙が注目されるだろう。
ところで、2012.03.21付けの本blogにて「ご先祖様はどちら様」の書評を掲載したが、突き詰めるところ、人間が誕生する前に地球が誕生し、その前に宇宙が誕生していたわけである。そうボク達はつまり星の欠片ということになる。

以前、金融ビックバンという言葉が流行ったが、本書によれば137億光年前にビックバンは起こった。
結局のところ「無」から「有」が生まれたことになる。そうビックバンが起こる前は、なにも存在していなかったのだ。

そして、宇宙誕生から約3億年後に著者の研究している「宇宙で最初の星=ファーストスター」が誕生することになる。東京大学数物連携研究所に勤務する著者のファーストスターの研究成果が本書にコンパクトのまとめられている。では何故著者は、「ファーストスター」の研究をはじめたのか?いたってシンプルである。
「クリーン」だったからである。初期条件が明確だったからある程度は理論で研究できる。

あのガリレオ・ガリレイが天体望遠鏡を発明を発明し偉大な業績であることは、皆さんもご存じのようにコンピュータは益々進化している。著者がいうには、この10年で約300倍コンピュータは進化したそうだ。
ところが天文学はそう単純ではなく、人間がそれに追いつけないと著者は嘆く。

そして、著者は星の生成に関わる力で最も重要な「重力」から、10億個のつぶつぶひとつひとつに対して7つの方程式を用い数えること400回のシュミレーションを行い、ファーストスターのシミュレーション結果を導き出した。日々宇宙は拡張しているので煩雑さが増す。よって「壁にぶち当たる」ことが結果、研究の飛躍に繋がると著者はいう。星にも世代があり現在第3世代まで研究が進められている。

著者いわく、宇宙の研究はおおよそ、約13%まで解明されたそうだ。よってダヴィンチの言う「我々は、足元のことを宇宙より知らない」とすれば、ボク達の地殻etc..を一体どれくらい知っているのだろうか?
多少矛盾するかも知れないが、宇宙の全物質のうちボク達が知っているのは4%、残り22%がダークマター、そしてあと74%が暗黒エネルギーだそうだ。

とにかく、宇宙の観測結果は望遠鏡で132億光年先まで成功した。しかし宇宙の歴史は137億光年。では、恒星宇宙飛行により5億光年先まで行き137億光年を観測できるかといえばそう単純ではないらしい。
この点がボクにとって一番面白かった箇所かもしれない。

最終章は誰もが疑問を持ちそうなQ&A方式だ。たとえば宇宙人はいるの?さて著者の回答は?
宇宙には10の12乗すなわち億、兆、京、その次の単位の星の数。ちょっとイライラした事があったら星を眺めて見てはいかがでしょうか?
本書も心がすっきりする宇宙本でした。