■書評 カエルの声はなぜ青いのか? -共感覚が教えてくれること

03493073カエルの声はなぜ青いのか?

著者 ジェイミー・ウォード
訳者 長尾力
出版社 青土社
発行 2012 01/10



今月2冊目の動植物本をセレクト。ところが「青く鳴いたカエル」は誘い水。よって本書のタイトルはフェイクであり内容は、サブタイトルの「共感覚」。

この20年ほどしか研究されていない新分野と言ってもいいだろう。著者はこの分野の第一人者のひとりで約7年間の研究成果が本書にまとめられている。
その「共感覚」とは、一般的には別々に知覚される聴覚や視覚、味覚などの感覚が混合するのが共感覚。

特定の文字が赤に見えたり、フルートの音が金色に見えたり、数字の1が遠くに見えたりするのだ。
これは、遺伝子要因により、ごく自然に生まれたもの、盲目になって等喪失によって、その結果獲得したもの、

ある種の薬物を取得したことで一時的に獲得したものだそうだ。

一番有名なのが、ノーベル物理学賞受賞者リチャード・ファインマンも共感覚者だったそうだが、ヨーロッパ記録を樹立した、ダニエル・タメット氏ではないか。氏は円周率をなんと2万2514桁まで暗唱したという。また10ヵ国語をあやつるそうだが、氏は自閉症を併せもつ、とてもレナなケースである。
しかしこの記憶方法は、古代アリストテレスから伝わる「場所記憶法」を利用しているらしいが、長いアルファベットや数字、他人の誕生日など覚えるのに共感覚者たちは、場所や色という視覚を用いて利用する。

そうよって、カエルの声は青く、コオロギの声は赤くという色聴が生まれる。
一般の方々や「食」に携わるボクにとっては、視覚と味覚の関係がなじみ深いではないだろうか?風味を豊かにするうえで、一番影響力を持っているのが色である。だからこそペプシ社が添加物フリーをうたいクリスタルコーラを販売したところ大失敗した。
著者が言うには、最近の研究結果では21もの感覚があるという。よって脳科学もまだまだ研究途中であるのだろう。

「共感覚」・・赤ちゃんの発達、さまざまな感覚どうしの関係、具体的に多感覚というふつうの人にも見られる違った感覚の共存、空間と共感覚など「共感覚」のお得な入門書である。

また、ボクは星座占いetc..など信じることはしないが、オカルトや神秘主義関連の本の「他人の顔や身体が確かに見える」というのは、ごく限られた人にしか捉えることができないエネルギーと説明しているが、ここで気を付けていただきたいのが、隠れたエネルギーなど放射しておらず、ごく少数の人にだけ他人に対する自分の感情を共感覚によって色体験に切り替えているだけだそうだ。

だからこそ、とりわけ都会人の方々には、耳にイヤホンを付けずに日々変化する「世界の眺め」を感じとっていただきたいと思った。

カエルに誘われた本書は、思わぬ方向へといったのだが結果、想定外の面白い書籍であった。

尚、ダニエル・タメット氏についてさらに詳しく知りたい方は、著者の「天才が語る」をご一読下さいませ。