■書評 イタリア旅行 -「美しい国」の旅人たち

03444172イタリア旅行

著者 河村 英和
出版社 中公新書
発行 2011 08/25



卒業旅行シーズンである。ボクは昨年京都へ旅行し資金を使い果たしてしまい、今年は巣篭りです。
就活情報誌によれば、卒業旅行の行先TOP3は、3位グアム、2位フランス、1位はイタリアだそうだ。
今も昔も変わらぬ人気スポットへ、書籍での旅へ・・

イタリアでは母国を別名「ベル・パエーゼ(美しい国)」というそうです。
まずは、18世紀に本格的に登場したのが教養旅行(グランド・ツアー)です。英国の貴族たちがこぞってイタリアへ。ここがその当時最重要の目的地だったわけです。
《ゲーテとモンテーニュ》
ゲーテと言えば、「イタリア紀行」そしてモンテーニュ。驚くことに、この2人時代は違えどブレンナー峠を越えて、イタリア国土を南下し、ヴェネツィアまで同じ経路での旅路でした。
ヴェネツィアからは、関心度の差がクッキリ。ゲーテは古代遺跡や古代円形劇場をじっくり見学したそうだ。
他方、モンテーニュは温暖な地で転地療養もかねていた。
この時代、肺結核が蔓延しており、欧米のブルジョア階級の人々は夏はスイスなどの避暑地、冬は避寒地南イタリアやシチリアを目指した。
英国を筆頭に、ドイツ、ロシア、フランスからおびただしい人々がイタリアを訪れたそうだ。

ボクは、ロンドンとフランスしかヨーロッパへ行ったことがないが、一番驚いたのはホテル事情だ。
とくに大運河でおなじみのヴェネツィアなどは、由緒ある情緒を残すため住居からホテルへ転用したケースが非常に多い。そして、イタリアのホテル業は、スイスが実は牛耳っていた。これは、夏の避暑地のノウハウを持っていたためだ。冬のリヴィエラ海岸などはスイスのまさにお家芸だったそうだ。
また、ヴェネツィアでは、2006年に改装されたピノー美術館は、安藤忠雄氏が建築に携わっている。
氏のような建築家の所得は、グローバル化の影響などもあり約70%は海外である。

食に携わるボクにとっては、本書はイタリアの「美食」についてほとんど記されていないのが非常に残念でならないが、美術・彫刻など数えきれないほどの芸術は本書の魅力であり、今では観光のガイドブックには掲載されていない場所もこの書籍には記されているのが特徴である。
また、建物が以前とは全く変わってしまった場所もあり、郷土史・観光史と盛りだくさんである。
その代表といえるひとつが、〈ホテル・ル・ラ・パルマ〉。このホテルは、カリブ島の観光の目玉で「青い洞窟」はヨーロッパ中にブームを巻き起こしたが近年まで知られていなかった。またフレイグレイ平野は、ゲーテとモンテスキューを魅了し、ポンペイ遺跡もしかりである。
なんと言っても18世紀の時点で、ナポリがローマ以上の都会だとは本書で初めて知った。

ボクは美術の分野に精通していないが、ルートヴィヒ一世の50回以上のイタリア旅行は突出しているとしてフロイトやヴィラ(別荘)まで所有したニーチェ。
極めつけは、画家などは長期滞在のため改宗してまで、現地人と結婚してしまう例が多数あったそうだ。
まさにイタリアは、記憶の半島。どこへ行っても絵になることは容易に想像できる。
やはり海外で今一番行きたい場所は、比類なき国・イタリアである。