■ 風評被害  そのメカニズムを考える

03409945風評被害

著者 関谷 直也
出版社 光文社新書
発行 2011 05/20



「風評被害」・・農業従事者にとって連日報道されるメディアのニュースなど見ていると、正直嫌な言葉である。
そこで、今日はこの書籍をセレクト。

著者は、大学時代から恩師の強いプッシュもあり「うわさによる被害」を研究してきた。今は社会心理学を研究している。「うわさは、智者で止まる」

うわさと風評被害。「うわさ」・・不安を背景とし、正確な・詳細な情報を不足する空隙を想像力で埋めようとして、生まれると著者は定義している。
それでは、「風評被害」の逆をみてみよう。これは、まさに研究者ならではの視点である。
多分皆さまもこの光景は、残っているのではないだろうか?!2007.10.11に行われたボクシング世界フライ級戦「内藤大助vs亀田大毅」戦で、亀田は最終ラウンド内藤を持ち上げる反則行為を行った。
ここで持ち上げられた内藤のボクサーパンツにスポンサーの「ウェブクルー」という生命保険の比較サイトのグループ会社名がプリントされていた。
視聴者の立場であれば最終ラウンド。しかもスポーツマンシップに反するこの行為に注目するのは当然である。
しかし、それがスポーツ紙、メディアetc..で何度も繰り返しピックアップされたことにより、このスポンサーの広告効果が著者の調べでは、実に37億円もの効果があったそうだ。

この逆が「風評被害」である。つまりマイナスの広告効果・広報効果である。
著者の明確な定義は、絶対的な「安全」を求める心理が多様なネット・ワークを通じて社会的共振共鳴を起こす事だと言う。
例えば、福島県内で出荷停止基準を超える放射量がないにもかかわらず、福島第一原発の県というだけで農作物が売れない。
諸外国から日本をみれば、日本=放射能。外国人にも人気の「京都」へも影響を及ぼし観光をキャンセル。
「政府は、国内及び海外にも安全と言っているが、信じていいのかと考える懐疑心があり、もし仮に政府発表の基準地以下の僅かな放射線量が、将来に何か悪さをしないか当然心配する心理に繋がる」

枝野官房長官の「直ちに影響はない」。この国民へのメッセージは、あまりにも有名である。そして時代は情報過多時代、ツイッター、ソーシャルメディアを通じて瞬時に広がる。広島・長崎の原爆の際は伝言であった。

今、東北各県で「牛」の検査など行われているが、とりわけ口に入れるものは神経質にならざる負えない。
それが、人間の心情だからである。だが、過剰に反応しすぎると他人に害を及ぼし、経済的ダメージにも繋がる。
よって著者は、どのようなリスクをどの程度許容できるか?!3.11以降の日本社会の、そしてボク達の許容量が問われていると指摘する。
さらに、ボクがここに加えされてもらえれば、グローバル経済の潮流、敢えて世界の人と言いたい。
事実、財務省の発表によれば、昨年128トン台湾向けに輸出していたリンゴは、今年の5月(前年同時期)ゼロである。このリンゴは主に青森県の「貯蔵用りんご」である。まさに「風評被害」である。
しかし、台湾からしてそこに悪意はない。だからこそこの問題は根が深い。