■書評 「徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす」-社会的損失額40兆円の衝撃
徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす
著者 日本財団 子どもの貧困対策チーム
出版社 文藝春秋
発行 2016 09.20
我が国の政府が「貧困」という言葉を用いた法律を制定したのが、2014年のことである。その名称は、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」である。現在、我が国の子どもの貧困は、6人にひとりといわれております。
(2012年データ)因みに、日本のひとり親家庭の貧困率は、OECD中で最下位です。
本書では、そのデータから社会的にメガ・インパクトのある〈子どもの貧困〉にフォーカスし日本社会へもたらす真っ暗な道しるべにならぬよう提示しています。それは、子どもの貧困を今のまま改善せずに放置すると将来の所得の減少が42兆9000億円、財政収入損失は、5兆9000億円にもなるというのです。
上述したように、6人に5人の子どもは、いわば他人事ととらえてしまえば、何の危機感もありませんが、〈子どもの貧困〉というテーマを「ヒトゴト」ではなく、「ジブンゴト」として考えてみる。本書をご一読いただければ、決して他人事ではなく閉塞感を味わう日本の道しるべとなってしまうかが、お分かりいただけます。
察しが付くように貧困により、①治安への影響、②さらなる少子化へ拍車がかかり、③貧困の再生産と大きく
3つ思い浮かびます。本書では、③について深く掘り下げられており本書の第二章では、当事者の体験談として、風俗に行き学費を稼いだ女子「福祉は風俗にも負ける」、実父からの虐待により犯罪に手を染めた男の子「家族の団欒があれば犯罪に手を染めなかった」etc..と現場の声も記述されています。
では、貧困の連鎖から抜け出すには、具体的に何が必要なのでしょうか。それが、「社会的相続」です。すなわち、「社会的相続」=「『自立する力』の伝達行為」です。その要素として、①お金、②学力、③非認知能力(意欲、自制心、社会性、さらには、やり抜く力)です。
前述に至った背景には、残念ながら我が国のデータは非常に乏しく、アメリカからの引用となっております。これにはボクも激しく同意した次第です。何十年の月日のデータを蓄積し、1960~70年代からスタートした「ペリー就学前計画」、「アベセダリアンプロジェクト」、さらには、2010年から始まった親向けプログラムは、保護者まで巻き込む「シカゴハイツ幼児センター」と、もっとマスコミなどでも取り上げてほしいプログラムは、非常に参考になります。詳細については、是非本書でご確認下さいませ。
このプログラムを受けた人は、経済面だけとってみても、生活保護を一定期間以上受給した人の割合が、5分の1になったというから、それだけでも、納税者の負担は減り、税収も増えるケースだとはっきりわかります。
非常に残念ではあるが、我が国の〈子どもの貧困〉に対する議論は、建設的な議論がなされずに、多額の予算が投入されております。費用対効果大に導くには、この検証を国民一人ひとりが「ジブンゴト」と捉える享受が必要なのです。右肩上がりに増える〈子どもの貧困〉を放置すれば、間違いなく日本の未来は閉ざされるでしょう。
徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす
著者 日本財団 子どもの貧困対策チーム
出版社 文藝春秋
発行 2016 09.20
我が国の政府が「貧困」という言葉を用いた法律を制定したのが、2014年のことである。その名称は、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」である。現在、我が国の子どもの貧困は、6人にひとりといわれております。
(2012年データ)因みに、日本のひとり親家庭の貧困率は、OECD中で最下位です。
本書では、そのデータから社会的にメガ・インパクトのある〈子どもの貧困〉にフォーカスし日本社会へもたらす真っ暗な道しるべにならぬよう提示しています。それは、子どもの貧困を今のまま改善せずに放置すると将来の所得の減少が42兆9000億円、財政収入損失は、5兆9000億円にもなるというのです。
上述したように、6人に5人の子どもは、いわば他人事ととらえてしまえば、何の危機感もありませんが、〈子どもの貧困〉というテーマを「ヒトゴト」ではなく、「ジブンゴト」として考えてみる。本書をご一読いただければ、決して他人事ではなく閉塞感を味わう日本の道しるべとなってしまうかが、お分かりいただけます。
察しが付くように貧困により、①治安への影響、②さらなる少子化へ拍車がかかり、③貧困の再生産と大きく
3つ思い浮かびます。本書では、③について深く掘り下げられており本書の第二章では、当事者の体験談として、風俗に行き学費を稼いだ女子「福祉は風俗にも負ける」、実父からの虐待により犯罪に手を染めた男の子「家族の団欒があれば犯罪に手を染めなかった」etc..と現場の声も記述されています。
では、貧困の連鎖から抜け出すには、具体的に何が必要なのでしょうか。それが、「社会的相続」です。すなわち、「社会的相続」=「『自立する力』の伝達行為」です。その要素として、①お金、②学力、③非認知能力(意欲、自制心、社会性、さらには、やり抜く力)です。
前述に至った背景には、残念ながら我が国のデータは非常に乏しく、アメリカからの引用となっております。これにはボクも激しく同意した次第です。何十年の月日のデータを蓄積し、1960~70年代からスタートした「ペリー就学前計画」、「アベセダリアンプロジェクト」、さらには、2010年から始まった親向けプログラムは、保護者まで巻き込む「シカゴハイツ幼児センター」と、もっとマスコミなどでも取り上げてほしいプログラムは、非常に参考になります。詳細については、是非本書でご確認下さいませ。
このプログラムを受けた人は、経済面だけとってみても、生活保護を一定期間以上受給した人の割合が、5分の1になったというから、それだけでも、納税者の負担は減り、税収も増えるケースだとはっきりわかります。
非常に残念ではあるが、我が国の〈子どもの貧困〉に対する議論は、建設的な議論がなされずに、多額の予算が投入されております。費用対効果大に導くには、この検証を国民一人ひとりが「ジブンゴト」と捉える享受が必要なのです。右肩上がりに増える〈子どもの貧困〉を放置すれば、間違いなく日本の未来は閉ざされるでしょう。