▼書評 『奇妙な菌類』-ミクロ世界の生存戦略
奇妙な菌類-ミクロ世界の生存戦略
著者 白水 貴
出版社 NHK出版
発行 2016 04/10
《陸上生物五億年の進化!!》
本書は、数多の珍菌を皆さんにお届けしたい、そんな強い思いで「日本珍菌賞(2013年)開催」の企画に携わった著者による、菌類たちの多種多様な生態、その実用性と執筆された面白い書籍です。
菌と言っても、お子様達の「バイキンマン」から食卓における栽培用キノコ、ビール酵母と幅が広い。それもそのはずである。現在、地球上に存在する菌類の推定数は60万種とも言われ、ちなみに植物は30~45万種、動物は200~1000万種、生物界最大といわれる昆虫にいたっては、200~1100万種だ。そして、得体のしれない菌類は、僅か2%しかボク達は知り得ていない状況である。まだまだ、未開の地というわけである。
菌類をスターにしたい、そんな思いが著者から伝わってきます。例えば、「束になって巨大化する菌」では、動物界で一番大きなシロナガスクジラ、植物界ではジャイアントセコイア、そして菌類最大(現段階で)は米・オレゴン州のブルー・マウンテンにある針葉樹林で樹木の根から発見されたオニナラタケから発見された菌糸は、なんと東京ドームの206倍だから呆気にとられます。その他、アリの行動を操る菌、昆虫によって栽培される菌、銃のような細胞作って獲物を獲得する菌と様々な生き物と共生関係を持っている微生物の姿が描かれています。昆虫と植物の共生関係を当然、思い出します。
ボクが個人的に興味を持ったのは、身内でもお構いなしの「菌寄生菌」です。この菌が寄生することで、キノコの形や色が健全なものとは似ても似つかぬ状態になるという。この奇形な菌の代表が、かの南方熊楠を魅了した「タケリタケ」です。その写真から天をも突かんとするその姿には猛々しさを感じます。
また、菌類は植物固体とつながっているが、その菌糸のネットワークで植物間の情報のやりとりが行われている可能性があるという。これは植物は昆虫などから食害を受けた時、その刺激に反応して発揮性物質を生産し、害虫などを遠ざけたり、その捕食者を誘引して排除させたりするのと同様の機能(インターネット)を兼ね備えていることを意味します。本書の最終章では、例えばプラスチックに寄生する菌、もはや国民病といえる「スギ花粉症」を抑制する菌などの実用性などが記述されています。
菌の分類から平易にキノコやカビの生態を紹介された本書は、呆気にとられるほどの菌類の様々な戦略をとる生き物が紹介されています。是非、菌の奇妙な世界を体験してみて下さい。
きっと実生活に密着した、『菌の卵』の発見があると思います。
奇妙な菌類-ミクロ世界の生存戦略
著者 白水 貴
出版社 NHK出版
発行 2016 04/10
《陸上生物五億年の進化!!》
本書は、数多の珍菌を皆さんにお届けしたい、そんな強い思いで「日本珍菌賞(2013年)開催」の企画に携わった著者による、菌類たちの多種多様な生態、その実用性と執筆された面白い書籍です。
菌と言っても、お子様達の「バイキンマン」から食卓における栽培用キノコ、ビール酵母と幅が広い。それもそのはずである。現在、地球上に存在する菌類の推定数は60万種とも言われ、ちなみに植物は30~45万種、動物は200~1000万種、生物界最大といわれる昆虫にいたっては、200~1100万種だ。そして、得体のしれない菌類は、僅か2%しかボク達は知り得ていない状況である。まだまだ、未開の地というわけである。
菌類をスターにしたい、そんな思いが著者から伝わってきます。例えば、「束になって巨大化する菌」では、動物界で一番大きなシロナガスクジラ、植物界ではジャイアントセコイア、そして菌類最大(現段階で)は米・オレゴン州のブルー・マウンテンにある針葉樹林で樹木の根から発見されたオニナラタケから発見された菌糸は、なんと東京ドームの206倍だから呆気にとられます。その他、アリの行動を操る菌、昆虫によって栽培される菌、銃のような細胞作って獲物を獲得する菌と様々な生き物と共生関係を持っている微生物の姿が描かれています。昆虫と植物の共生関係を当然、思い出します。
ボクが個人的に興味を持ったのは、身内でもお構いなしの「菌寄生菌」です。この菌が寄生することで、キノコの形や色が健全なものとは似ても似つかぬ状態になるという。この奇形な菌の代表が、かの南方熊楠を魅了した「タケリタケ」です。その写真から天をも突かんとするその姿には猛々しさを感じます。
また、菌類は植物固体とつながっているが、その菌糸のネットワークで植物間の情報のやりとりが行われている可能性があるという。これは植物は昆虫などから食害を受けた時、その刺激に反応して発揮性物質を生産し、害虫などを遠ざけたり、その捕食者を誘引して排除させたりするのと同様の機能(インターネット)を兼ね備えていることを意味します。本書の最終章では、例えばプラスチックに寄生する菌、もはや国民病といえる「スギ花粉症」を抑制する菌などの実用性などが記述されています。
菌の分類から平易にキノコやカビの生態を紹介された本書は、呆気にとられるほどの菌類の様々な戦略をとる生き物が紹介されています。是非、菌の奇妙な世界を体験してみて下さい。
きっと実生活に密着した、『菌の卵』の発見があると思います。